- 完成した読書感想文の全文4本(小2・小4・小6・中2)
- 学年ごとの字数と、原稿用紙での枚数
- 1本の中で、書き出し・本文・結びがどうつながっているか
- 題材は全文がインターネットで読める4作品
- 丸写しにしない使い方
部品はそろっているのに、通した一本を見たことがない
書き出しの例、結びの例、題名のつけ方——ここまでは、探せば見つかります。
けれど、それをつなげて最後まで書いた一本を、通して読んだことがある子はほとんどいません。
部品の作り方が分かっても、全体の長さや進み方が分からないと、途中で不安になります。
このページには、完成した感想文を4本、最初の一文から最後の一文まで、省略せずに置いてあります。
学年ごとの字数と、その数え方
青少年読書感想文全国コンクールの応募要項には、部ごとの字数が決められています。
| 学年 | 本文の字数 |
|---|---|
| 小学校低学年(1・2年) | 800字以内 |
| 小学校中学年(3・4年) | 1,200字以内 |
| 小学校高学年(5・6年) | 1,200字以内 |
| 中学校 | 2,000字以内 |
数え方も、同じ応募要項に書かれています。ここを知らないまま書くと、字数が合いません。
- 「句読点はそれぞれ1字に数えます」
- 「改行のための空白か所は字数として数えます」
- 「題名、学校名、氏名は字数に数えません」
- 「原稿用紙の大きさ、字詰めに規定はありません」
つまり段落を分けると、そのぶん字数は増えます。行の残りの空白も数えるからです。
下の4本は、20字づめの原稿用紙に書いたものとして、字下げと行末の空白まで入れて数えてあります。
例1 小学校低学年(2年生)『手袋を買いに』
手袋を買いに/新美南吉 上限800字のところ、原稿用紙で800字(20字づめで2枚)。文字だけを数えると727字です。
ぼくは、「手ぶくろを買いに」という本を読みました。子ぎつねが、はじめて人間の町へ手ぶくろを買いに行くお話です。
いちばん心にのこったのは、お母さんぎつねが、子ぎつねのかた手だけを人間の手にかえる場面です。お母さんは、子ぎつねを行かせるのがこわくてたまらないのに、それでも一人で行かせます。ぼくははじめ、どうして一しょに行ってあげないのかなと思いました。
でも、読んでいくうちに分かってきました。お母さんぎつねは、前に人間にこわい目にあわされたことがあるのです。それでも子ぎつねのために、行かせる方をえらびました。こわいのに行かせるのは、ついて行くよりもずっと勇気がいることだと思いました。
ぼくにも、にたことがありました。一年生のとき、はじめて一人でとなりの家までおつかいに行きました。ぼくはドキドキして、行きたくないと言いました。お母さんは、げんかんの前で待っていてくれました。あのとき、お母さんもドキドキしていたのかもしれません。今なら、そう思えます。
もう一つ、心にのこった場面があります。子ぎつねが、まちがえてきつねの手を出してしまうところです。ぼくは見つかってしまうと思って、ページをめくるのがこわくなりました。でも、ぼうし屋さんは何も言わずに手ぶくろをわたしてくれました。ぼくはほっとして、体の力がぬけました。
さいごに、お母さんぎつねが、ほんとうに人間はいいものかしら、と言います。ぼくは、いい人もいるよと言ってあげたくなりました。でも、お母さんぎつねがそう思えるようになるまでには、まだ時間がかかるのかもしれません。
ぼくはこれから、はじめて会う人を、こわいと決めつけないようにしたいです。子ぎつねのように、まず自分から手をのばしてみようと思います。
この1本の組み立て
- 書き出し——本の題名と、どんな話かを1文ずつ。あらすじは2文で切り上げています
- 本文——心に残った場面を選び、自分の経験につなげています
- 結び——これからどうしたいかで結んでいます。物語の言葉を自分の行動に置きかえました
例2 小学校中学年(4年生)『ごん狐』
ごん狐/新美南吉 上限1,200字のところ、原稿用紙で1,140字(20字づめで2.85枚)。文字だけを数えると1,056字です。
「ごん狐」を読み終わったとき、わたしはすぐに本を閉じることができませんでした。最後の一行のあとに、まだ何か続きがあるような気がしたからです。
ごんは、いたずらばかりしている一人ぼっちの子ぎつねです。兵十がとったうなぎをにがしてしまい、そのあと、兵十のおっ母が死んでしまいます。ごんは、あのうなぎはおっ母のためだったのかもしれないと考えます。わたしは、ここでごんの気持ちが変わったのだと思いました。
それからごんは、毎日のように兵十の家へ、くりや松たけを持っていきます。だれにも言わず、置いてくるだけです。わたしは読みながら、早く気づいてあげてほしいと何度も思いました。名前を書いた紙を一まい置いておけばいいのに、とも思いました。
でも、ごんはそうしませんでした。ごんは、ほめてほしくてやっていたのではないからです。自分がしてしまったことを、自分で取りかえそうとしていただけなのだと思います。わたしにも、少しだけ分かる気がしました。
三年生のとき、わたしは友だちの筆箱を落として、中のえん筆をおってしまいました。わざとではなかったけれど、こわくて言えませんでした。次の日、わたしは新しいえん筆をこっそり筆箱に入れました。友だちは気づかないままでした。わたしは、ほっとしたのと、もやもやしたのが、半分ずつでした。
あのときのもやもやが、ごんを読んでやっと分かりました。わたしは、あやまるのがこわくて、物でごまかしただけだったのです。ごんも同じだったのかもしれません。ちがうのは、ごんはそれを毎日続けたことです。
とちゅうで、ごんが一度だけ本音を言う場面があります。兵十が、くりは神さまがくれたのだと言われているのを聞いて、ごんは、おれは引き合わないなあ、と思うのです。わたしはここを読んで、ごんもやっぱり気づいてほしかったのだと分かりました。何も思っていないふりをしていただけでした。
さいごに、兵十はごんをうってしまいます。そして、土間のくりを見て、やっと気がつきます。ごんはうなずきます。話ができたのは、その一しゅんだけでした。わたしは、この場面が悲しいだけではないと思いました。ごんは、最後に分かってもらえたからです。
けれど、分かってもらうために、ごんは死ななければなりませんでした。わたしはそれがくやしいです。だから、わたしは同じことをしたくありません。
あのとき、わたしは友だちに、ごめんね、と言うべきでした。今からでもおそくないので、言おうと思います。ごんのように、だまって置いてくるのではなく、自分の口で言いたいです。
この1本の組み立て
- 書き出し——読み終わった直後の自分の状態から入り、あらすじより先に気持ちを置いています
- 本文——心に残った場面を選び、自分の経験につなげています
- 結び——自分の経験に返して結んでいます。物語への感想で終わらず、自分が次にすることを書きました
例3 小学校高学年(6年生)『注文の多い料理店』
注文の多い料理店/宮沢賢治 上限1,200字のところ、原稿用紙で1,200字(20字づめで3枚)。文字だけを数えると1,088字です。
「注文の多い料理店」を初めて読んだとき、わたしは最後まで気づきませんでした。二人の紳士といっしょになって、次の戸に何が書いてあるのだろうと、わくわくしながら読み進めていたのです。
物語では、二人の紳士が山奥で西洋料理店を見つけます。戸を開けるたびに注文が書いてあり、二人はその通りにしていきます。帽子と外套と靴をとってください、めがねやカフスボタンを金庫に入れてください、壺のクリームを顔や手足にぬってください。二人は自分たちが客だと信じたまま、言われた通りにします。
塩をもみこんでくださいと書かれたところで、やっと二人は気づきます。注文が多いというのは、店が客に注文していたという意味だったのです。わたしはそこで、背中がすうっと冷たくなりました。だまされていたのは二人だけではなく、読んでいたわたしも同じだったからです。
作者は、わたしを紳士と同じ場所に立たせていたのだと思います。だから読み返してみると、最初から手がかりがありました。二人は山に入るとき、鹿に二三発おみまいしたかったと話しています。動物を撃つことを、楽しみのように話しているのです。それなのに、自分が食べられそうになると泣き出します。
気づいてから読み返して、もう一つこわいことに気づきました。店の言葉づかいが、最初から最後まで一度もくずれないのです。どうか、してください、お気の毒でした。ていねいなまま、二人を追いつめていきます。おどす言葉より、ていねいな言葉のほうがこわいことがあるのだと思いました。
わたしは、この二人をひどい人だと思いました。けれど、そう思ったあとで、自分はどうだろうと考えました。わたしは肉を食べます。魚も食べます。それを当たり前だと思っていて、その動物のことを考えたことはほとんどありませんでした。
去年、家族で川へ行ったとき、わたしは初めて魚を自分でつかみました。バケツの中で動く魚を見て、食べたくないと思いました。でも、焼いてもらったら、おいしいと言って食べました。わたしは、あのときの自分と、この二人の紳士が、そんなに遠くないような気がします。
この物語がこわいのは、化け物が出てくるからではありません。立場が入れかわっただけで、いつもしていることが自分にはね返ってくるからです。
最後に、二人の顔は紙くずのようにくしゃくしゃになって、家に帰っても元にもどりません。わたしは、これは罰ではなく、しるしだと思いました。気づいてしまったことは、もう忘れられないというしるしです。
わたしも、気づいてしまいました。だからこれからは、いただきますを、言葉だけで終わらせないようにしたいと思います。
この1本の組み立て
- 書き出し——だまされていたことに気づかなかった、と最初に認めるところから入っています
- 本文——心に残った場面を選び、自分の経験につなげています
- 結び——作品の最後の一文の意味を、自分なりに言いかえて結んでいます
例4 中学生(2年生)『走れメロス』
走れメロス/太宰治 上限2,000字のところ、原稿用紙で1,980字(20字づめで4.95枚)。文字だけを数えると1,819字です。
「走れメロス」は、友情の物語として紹介されることが多い作品です。わたしも小学生のころ、そう習った記憶があります。けれど今回読み返して、いちばん心に残ったのは、友情そのものではありませんでした。メロスが一度、走るのをやめてしまう場面です。
物語のあらすじは単純です。メロスは人を信じない王に怒り、捕らえられます。妹の結婚式のために三日の猶予を願い出て、友人のセリヌンティウスを人質に置いて村へ帰ります。そして約束の日、王のもとへ走って戻ります。
ここまでなら、まっすぐな英雄の話です。けれど太宰は、その途中に長い時間をかけます。川が氾濫し、山賊に襲われ、日は傾き、体は動かなくなります。そしてメロスは、路傍の草原に身を投げ出して、動けなくなるのです。
このとき、メロスの中に出てくる言葉が、わたしには忘れられません。もう、どうでもいい、正義だの、信実だの、愛だの、考えてみればくだらない、というような気持ちが湧いてきます。あれほど怒って、あれほど正しさを信じていた人が、自分でそれをくだらないと言うのです。
わたしは、この場面があるから、この物語を信じられると思いました。もしメロスが最初から最後まで走り続けていたら、それはただの立派な話で終わっていたはずです。読んでいるわたしとは関係のない、遠い話になっていたと思います。
わたしにも、投げ出したことがあります。一年生のとき、部活の朝練を毎日続けると自分で決めました。最初の一か月は続きました。けれど、雨の日が続いて、二日休んだところで、行かなくてもだれも困らないのではないかと思いました。だれかに止められたわけではありません。自分の中で、続ける意味が急に薄くなったのです。
あのときのわたしは、めんどうくさいだけだと思っていました。でもメロスを読んで、少し違うと分かりました。人は、疲れきったときに、自分が大事にしていたものの価値そのものを下げてしまうのだと思います。そうすればあきらめても自分を責めなくてすむからです。メロスがくだらないと言ったのは、自分を守るための言葉だったのではないでしょうか。
それでもメロスは、また立ち上がります。理由は立派ではありません。清水が湧いているのを見つけて、水を飲んだからです。体が少し回復したから、また歩けるようになった。それだけです。わたしは、ここがとても正直だと思いました。
人が立ち直るきっかけは、強い意志や、美しい言葉ではないのかもしれません。眠ることや、食べることや、水を飲むことなのかもしれません。わたしも、二日休んだあと、朝早く目が覚めた日にたまたま行ってみたら、そのまま続けられるようになりました。決意し直したわけではありませんでした。
最後にメロスは間に合い、二人は互いに一度ずつ殴り合います。メロスは、自分が一度でも裏切ろうとしたことを打ち明けます。わたしは、ここを読んで初めて、この物語が友情の話だと思えました。
友情は、疑わなかったことではありません。疑ってしまった自分を、相手に言えることのほうだと思います。黙っていれば、メロスは完全な英雄のままでいられました。それでも言ったのは、そのままではセリヌンティウスの前に立てないと思ったからでしょう。
この場面のあと、王が二人に近づいてきます。おまえらは、わしの心に勝ったのだと言い、自分も仲間に入れてほしいと願い出ます。人を信じられなかった王が、説得されたのではなく、目の前で見せられて変わりました。言葉ではなく、実際に走ってきた人がいたという事実だけが王を動かしたのだと思います。
そして物語は、英雄の場面では終わりません。少女が緋のマントを差し出し、まっぱだかだと友に指摘されて、メロスは赤面します。ここで初めてメロスは、ただの人にもどります。わたしは、この終わり方が好きです。立派なことをした人を、立派なままにしておかない終わり方だからです。
わたしは、友だちに対して、そこまで正直になれていません。うまくいかなかったことや、いやだと思ったことを、言わずに済ませてしまいます。そのほうが関係がこわれないと思っているからです。けれどそれは、相手を信じていないということでもあります。
この本を読んで、わたしが変えたいのは、走り続ける強さではありません。投げ出したことを、あとで自分の口で言えるようになることです。まずは、朝練を休んだ日のことを、いっしょに続けている友だちに話してみようと思います。
この1本の組み立て
- 書き出し——よく言われている読み方を先に置き、それとは違うところに心が動いたと宣言しています
- 本文——心に残った場面を選び、自分の経験につなげています
- 結び——何を変えたいかで結んでいます。強くなる決意ではなく、できることを1つだけ書きました
4本の字数(20字づめの原稿用紙で数えた場合)
| 例 | 原稿用紙での字数 |
|---|---|
| 例1 小学校低学年(2年生) | 800字/上限800字 |
| 例2 小学校中学年(4年生) | 1,140字/上限1,200字 |
| 例3 小学校高学年(6年生) | 1,200字/上限1,200字 |
| 例4 中学生(2年生) | 1,980字/上限2,000字 |
どれも上限を超えていません。
字数が足りないときは段落を増やすと少し伸びますが、増えるのは空白であって中身ではありません。
数え方そのものは原稿用紙の使い方にまとめてあります。
丸写しにしないでください
この4本をそのまま出しても、読んだ人には伝わりません。感想文で読まれているのは、文章のうまさではなく、その子が何を思ったかだからです。
使い方は2つです。
- 長さの見当をつける——自分の学年の例を1本読んで、これくらい書けばいいのかと知る
- つなぎ方をまねる——場面から自分の経験へどう移っているか、その順番だけを借りる
中身は、自分が本当に思ったことでなければ書けません。
思ったことが見つからないときは、心に残った場面をひとつ選ぶところからやり直してください。
題材にした4作品は、全文がインターネットで読めます
4本とも、青空文庫で全文が公開されている作品を選びました。
例文を読んだあとで原作にあたれば、どこを取り上げてどこを省いたのかが分かります。
- 新美南吉 手袋を買いに(青空文庫)
- 新美南吉 ごん狐(青空文庫)
- 宮沢賢治 注文の多い料理店(青空文庫)
- 太宰治 走れメロス(青空文庫)