八十五
百 人 一 首 ・ 八 十 五 番 俊恵法師
夜もすがら もの思ふ頃は 明けやらで
ねやのひまさへ つれなかりけりよもすがら ものおもふころは あけやらで
ねやのひまさへ つれなかりけり
いまのことば
一晩中思い悩むこのごろは、
なかなか夜が明けきらず——
寝室の戸のすきままでもが、つれなく思われます。
ことばの景色
光が差し込まない戸のすきまを、そっけないと感じた——恨みの向け先が面白い歌です。三十番は月を「つれなく」見ました。こちらは建具のすきま。恨みは、どんどん身近なものへ向かいます。
「夜もすがら」は一晩中。夜の長さを嘆く歌は百人一首にいくつもありますが、この歌は待つ相手が書かれていないのが特徴。だから読む人が、自分の眠れない夜を重ねられます。
作者の俊恵法師は七十四番源俊頼の子で、七十一番源経信の孫。祖父・父・子の三代が百人一首に並ぶ家です。三十六番からの清原の三代とあわせて、二つの三代が札の中にあります。
考えてみよう
- 問一眠れない夜に気になるものを、三つ挙げてみましょう。
- 問二身のまわりの物を「つれない」と感じる文を作ってみましょう。
- 問三百人一首の三代の家を探して、家系図を書いてみましょう。
答えはひとつではありません。声に出して、外に出て、確かめながらどうぞ。
豆知識——
俊恵の家には「歌林苑」という歌の集いがあったと
伝わります。
身分を
問わず
歌人が
集まった
場で、
八十二番の道因法師も加わっていたとされます。
札どうしは、
思いがけないところでつながっています。