七十一
百 人 一 首 ・ 七 十 一 番 大納言経信
夕されば 門田の稲葉 おとづれて
あしのまろやに 秋風ぞ吹くゆふされば かどたのいなば おとづれて
あしのまろやに あきかぜぞふく
いまのことば
夕方になると、門の前の田の稲葉を
さわさわと鳴らしながら——
葦ぶきの粗末な家に、秋風が吹いてくる。
ことばの景色
「おとづれて」が面白い使われ方です。いまは「訪問する」の意味ですが、もとは「音を立てる」。風が稲葉を鳴らしてやって来る——音と訪問が、一つの語に同居しています。
順番にも注目を。田→家、外→内、遠く→近く。風が近づいてくる道筋を、そのまま歌の順にした。聞こえてから感じるまでの時間が、三十一文字に入っています。
作者の源経信は大納言まで進んだ公卿で、桂大納言と号しました。その三男が七十四番源俊頼、その子が八十五番俊恵法師——三代が百人一首に並ぶ、もう一つの家です。
考えてみよう
- 問一風の音を、何が鳴っているかで聞き分けてみましょう。
- 問二遠くから近くへ、順に書く文を作ってみましょう。
- 問三いまと昔で意味が変わったことばを、三つ調べてみましょう。
答えはひとつではありません。声に出して、外に出て、確かめながらどうぞ。
豆知識——
「まろや」は葦などでふいた粗末な小屋のこと。
十九番の
葦、
三十九番の
篠——
百人一首の草は、たいてい屋根や道具になる草です。