八十四
百 人 一 首 ・ 八 十 四 番 藤原清輔朝臣
ながらへば また此の頃や しのばれむ
憂しと見し世ぞ 今は戀しきながらへば またこのごろや しのばれむ
うしとみしよぞ いまはこひしき
いまのことば
生き長らえたなら、いまのこの辛さも
また懐かしく思い出すのだろうか。
つらいと思っていた昔が、いまは恋しいように。
ことばの景色
六十八番の三条院と同じ考え方です。ただしこちらは過去・現在・未来の三つが入っている。つらかった昔→恋しいいま→つらいいま→恋しくなる未来。同じことが繰り返されると気づいた、その発見の歌です。
この構えは、いまの辛さを和らげる働きも持ちます。いつか懐かしむのだから、いまも悪いばかりではない。時間を引いて見ることが、そのまま救いになる。
作者の藤原清輔は七十九番藤原顕輔の次男で、六条藤家の三代目。歌学(歌の学問)の書物を多く残しました。親子で百人一首に入り、親子で歌の学問を受け継いだ家です。
考えてみよう
- 問一つらかったことが懐かしくなるまで、どのくらいかかると思いますか。
- 問二六十八番と読み比べて、時間の扱い方を並べてみましょう。
- 問三十年後の自分に向けて、いまのことを三行書いてみましょう。
答えはひとつではありません。声に出して、外に出て、確かめながらどうぞ。
豆知識——
六条藤家と、八十三番俊成の御子左家は、歌の道で競い合った二つの家です。
百人一首は、その両方から歌を採っています——
選び
手の
定家は
御子左家の
人でした。