八十八
百 人 一 首 ・ 八 十 八 番 皇嘉門院別当
難波江の あしのかりねの 一夜ゆゑ
みをつくしてや 戀ひわたるべきなにはえの あしのかりねの ひとよゆゑ
みをつくしてや こひわたるべき
いまのことば
難波江の葦の刈根の一節ではないが——
たった一夜の仮寝のために、
身を尽くして恋し続けるのでしょうか。
ことばの景色
百人一首でも屈指の、掛詞の多い一首です。「かりね」=刈根と仮寝。「一夜」=葦の一節と一晩。「みをつくし」=澪標と身を尽くし。三つの掛詞が、すべて難波の風景から採られている。
十九番の葦、二十番の澪標——この八十八番は、二つの札の道具を両方使っています。百人一首を順に読んできた人には、見覚えのある材料で組み立てられた一首に見えるはずです。
作者の皇嘉門院別当は崇徳天皇の中宮・皇嘉門院に仕えた女房。皇嘉門院は七十六番藤原忠通の娘です。
考えてみよう
- 問一掛詞を三つ使った文を作ってみましょう(難しければ二つでも)。
- 問二十九番・二十番とあわせて、難波の三首を並べてみましょう。
- 問三葦の節を実際に数えて、長さを測ってみましょう。
答えはひとつではありません。声に出して、外に出て、確かめながらどうぞ。
豆知識——
百人一首は、後半になるほど技巧が重なります。
四十三番のように
技を
使わない
歌と、この
八十八番のように
技を
重ねた
歌。
両方入っているのが、この歌集の懐の深さです。