八十九
百 人 一 首 ・ 八 十 九 番 式子内親王
玉の緒よ たえなば絶えね ながらへば
忍ぶることの 弱りもぞするたまのをよ たえなばたえね ながらへば
しのぶることの よはりもぞする
いまのことば
我が命よ、絶えるなら絶えてしまえ。
このまま生き長らえていたら——
忍び隠す力が、弱ってしまうかもしれないから。
ことばの景色
百人一首の中でも、最も激しい一首とされます。「玉の緒」は玉をつなぐ糸、転じて命のこと。死を願う理由が「秘密を守るため」というのが、この歌の凄みです。
四十番・四十一番も忍ぶ恋の歌でした。あちらは「ばれてしまった」、こちらは「ばれる前に終わりたい」。同じ題から、ここまで違う結論が出ます。
作者の式子内親王は後白河天皇の皇女で、賀茂の斎院を務めた方。新三十六歌仙・女房三十六歌仙に数えられます。八十三番藤原俊成に歌を学んだと伝えられます。
考えてみよう
- 問一秘密を守るのが難しいのは、なぜでしょう。
- 問二四十番・四十一番と並べて、忍ぶ恋の三首を読み比べてみましょう。
- 問三命を糸にたとえる。ほかのたとえも考えてみましょう。
答えはひとつではありません。声に出して、外に出て、確かめながらどうぞ。
豆知識——斎院は、賀茂神社に仕える未婚の皇女。務めのあいだは俗世を離れて暮らします。そういう立場を知ってから読むと、「忍ぶ」の重さが変わります。