六十二
百 人 一 首 ・ 六 十 二 番 清少納言
夜をこめて 鳥のそら音は はかるとも
世に逢坂の 関はゆるさじよをこめて とりのそらねは はかるとも
よにあふさかの せきはゆるさじ
いまのことば
まだ夜が明けないうちに、鶏の鳴きまねでだまそうとしても、
あの函谷関ならともかく——
この逢坂の関は、決して通しませんよ。
ことばの景色
これは中国の故事を下敷きにした切り返しです。函谷関という関所は鶏が鳴くと開く決まりで、食客が鳴きまねをして夜中に通り抜けた——という話。それを知っている相手に、「その手は通じません」と返したのです。
そして「逢坂の関」に「逢う」を掛けている。「関は通さない」は「会いませんよ」でもある。教養と言葉遊びを同時に使って、軽くかわした——十番・二十五番に続いて、逢坂の関は三度目の登場です。
作者の清少納言は、『枕草子』の作者。四十二番清原元輔の娘で、三十六番清原深養父のひ孫にあたります。百人一首に三代がそろう、清原の家です。
考えてみよう
- 問一相手の話に乗りながら断る言い方を考えてみましょう。
- 問二十番・二十五番と読み比べて、逢坂の関の三首を並べてみましょう。
- 問三『枕草子』の有名な書き出しを調べて、声に出してみましょう。
答えはひとつではありません。声に出して、外に出て、確かめながらどうぞ。
豆知識——
『枕草子』は「関は」の段で、逢坂の関・須磨の関・鈴鹿の関を挙げています。
十番の
豆知識でも
触れた
一節です。
同じ人が、歌でも随筆でも同じ関所を書いていた。