四十一
百 人 一 首 ・ 四 十 一 番 壬生忠見
戀すてふ わが名はまだき 立ちにけり
人知れずこそ 思ひそめしかこひすてふ わがなはまだき たちにけり
ひとしれずこそ おもひそめしか
いまのことば
恋をしているという私の噂が、もう立ってしまった。
誰にも知られないように、
ひそかに思いはじめたばかりなのに。
ことばの景色
前の四十番と同じ歌合で向かい合った一首です。題は同じ「忍ぶ恋」。兼盛は「顔に出た」、忠見は「噂が立った」——同じ題から、まったく違う角度を取り出しました。
「まだき」は「まだそんな時期でもないのに、はやくも」。恋が始まるより先に噂が走った、という順番の逆転。情報は本人より速い——千年前の宮中でも、いまと同じでした。
作者の壬生忠見は、三十番壬生忠岑の子。父と並んで三十六歌仙に数えられます。百人一首には親子の組がいくつもありますが、父子そろって三十六歌仙というのは珍しいことです。
考えてみよう
- 問一噂が本人より速く伝わるのは、なぜでしょう。
- 問二同じお題で二人が書いたら、どこに違いが出ると思いますか。
- 問三四十番と四十一番、声に出して読み比べてみましょう。
答えはひとつではありません。声に出して、外に出て、確かめながらどうぞ。
豆知識——
百人一首の百人は、男性七十九名・女性二十一名。
男性の
内訳は
天皇七
名・
親王一
名・
公卿二十八
名・
下級貴族二十八
名・
僧侶十二
名、そして
経歴が
分からない三
名——
柿本人麻呂・
猿丸大夫・
蝉丸です。