八十
百 人 一 首 ・ 八 十 番 待賢門院堀河
ながからむ 心も知らず 黒髪の
みだれて今朝は ものをこそ思へながからむ こころもしらず くろかみの
みだれてけさは ものをこそおもへ
いまのことば
そのお心が末長く変わらないかどうかも分からないまま——
黒髪が乱れるように、
今朝の私の心も乱れています。
ことばの景色
黒髪の乱れと、心の乱れを重ねた一首です。十四番の「しのぶもぢずり」も布の乱れを心に重ねていました。目に見える乱れを借りて、見えない乱れを書く——和歌の定石です。
ただしこの歌は、朝の場面であることがはっきりしているぶん、具体的です。寝乱れた髪を見て、そのまま心の話に移る。場面と気持ちの距離が、ほとんどありません。
作者の待賢門院堀河は女房三十六歌仙のひとり。待賢門院という方に仕えた女房です。六十五番の相模、七十二番の紀伊と同じで、仕え先の名が呼び名になっています。
考えてみよう
- 問一目に見える乱れで気持ちを表す文を作ってみましょう。
- 問二十四番と読み比べて、乱れの使い方を並べてみましょう。
- 問三朝の自分の様子を、三つ書き留めてみましょう。
答えはひとつではありません。声に出して、外に出て、確かめながらどうぞ。
豆知識——平安の女性にとって、長い黒髪は大切な身だしなみでした。だから「乱れる」ことに意味がある。暮らしの習慣を知ると、歌の手触りが変わります。