七十九
百 人 一 首 ・ 七 十 九 番 左京大夫顕輔
秋風に たなびく雲の 絶間より
もれ出づる月の 影のさやけさあきかぜに たなびくくもの たえまより
もれいづるつきの かげのさやけさ
いまのことば
秋風にたなびく雲の切れ間から
もれ出てくる月の光の——
なんと澄んで清らかなことか。
ことばの景色
雲の切れ間から差す光だけを見ている——そこがこの歌の上手さです。満月を正面から詠むのではなく、さえぎられて初めて見える明るさを取り出した。
「さやけさ」は澄んではっきりしているようす。音にすると、さ・や・け・さ——さ行の音が重なって、澄んだ感じが音そのものからも伝わってきます。声に出して読むと、よく分かります。
『新古今和歌集』の前書きは「崇徳院に百首歌たてまつりけるに」。七十七番崇徳院に差し出した百首のうちの一つです。作者の藤原顕輔は六条藤家の歌人で、八十四番藤原清輔の父にあたります。
考えてみよう
- 問一雲の切れ間から光が差すところを探して、写真に撮ってみましょう。
- 問二さ行の音を重ねた短い文を作ってみましょう。
- 問三さえぎられて初めてよく見えるもの——三つ挙げてみましょう。
答えはひとつではありません。声に出して、外に出て、確かめながらどうぞ。
豆知識——「百首歌」は、百の題で百首を一気に作る催しです。平安後期からさかんになりました。百人一首の後半には、この百首歌から選ばれた札が多くあります。