六十六
百 人 一 首 ・ 六 十 六 番 大僧正行尊
諸共に あはれと思へ 山ざくら
花よりほかに 知る人もなしもろともに あはれとおもへ やまざくら
はなよりほかに しるひともなし
いまのことば
互いに、いとしいと思っておくれ、山桜よ。
この山の奥では、
お前のほかに心を通わせる相手もいないのだから。
ことばの景色
桜に話しかけている歌です。しかも「諸共に」——自分だけでなく、桜のほうも同じ気持ちだろう、と決めている。相手を対等に扱うから、孤独がやわらぎます。
作者の行尊は修験の道を歩いた僧で、平等院大僧正とも呼ばれました。山奥で修行する人が、ふいに桜に出会った——そう読むと、この呼びかけの切実さが分かります。
七十番の良暹法師、六十九番の能因法師など、百人一首には僧侶が十二人入っています。都を離れた人の目が、歌集に奥行きを与えています。
考えてみよう
- 問一人でないものに話しかけたことはありますか。何と言いましたか。
- 問二山の桜と町の桜。咲く時期はどう違うでしょう。
- 問三ひとりでいるときに心が軽くなる方法を、三つ挙げてみましょう。
答えはひとつではありません。声に出して、外に出て、確かめながらどうぞ。
豆知識——
山桜は、花と葉が同時に出る種類の桜です。
生物の間で
読んだソメイヨシノは
花が
先に
咲きます。
行尊が見たのは、葉の緑を交えた桜だったはずです。