六
江 戸 の 生 き も の 学 ・ 六
日本の春を埋めつくすあの桜は、江戸の植木屋の村から広まりました。しかも、すべての木がたった一本から分けられた「クローン」です。
いまのことば
ソメイヨシノは江戸末期、染井村の植木職人たちから広まった品種。
種では殖えず、接ぎ木で殖やす——全国の木はみな同じ遺伝子を持つ。
一本の木の子孫たち
江戸の染井村(いまの東京・駒込あたり)は、植木職人が集まる園芸の一大産地でした。ここから広まった桜がソメイヨシノ。成長が早く、花が葉より先に咲いて木全体が花色に染まる——見栄えの良さで、明治以降、全国に植えられました。
ソメイヨシノは種からは同じものが育たないため、接ぎ木で殖やします。つまり全国のソメイヨシノは、遺伝的にはほぼ同一のクローン。だから同じ町の木はいっせいに咲き、いっせいに散る——「桜前線」がきれいな線を描くのは、このためです。
江戸の職人の技術が、現代の春の風景と、天気予報の開花予想まで作っていたのです。
考えてみよう
- 問一「クローンだから一斉に咲く」——開花予想との関係を説明できますか。
- 問二身近な桜がソメイヨシノかどうか、見分けるポイントを調べてみましょう。
- 問三全部同じ遺伝子であることの、良い点と心配な点を考えてみましょう。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——「ソメイヨシノ」の名は染井村と吉野山(桜の名所)から。近年は病気に強い品種への植え替えも進んでいます。クローンゆえの弱さ——考えてみようの答えのひとつが、現実に起きています。