三十二
東 海 道 ・ 大 礒 宿
旧暦五月二十八日に降る雨には、名前がついていました。
いまのことば
大磯は東海道の八番目の宿場。
広重の題は「虎ヶ雨」——雨の宿場です。
雨に名前をつける
「虎ヶ雨」は、旧暦五月二十八日ごろに降る雨の呼び名です。曾我兄弟の物語にゆかりのある女性の名から来ていると語り継がれてきました。特定の日の雨に名前がついている——日本の天気のことばの細かさを示す例です。
土山の春の雨、庄野の白雨、そして大磯の虎ヶ雨。広重は雨を何度も描き分けました。同じ「雨」でも、季節も降り方も違う。絵を並べると、雨の図鑑になります。
大磯は相模湾に面した海辺の宿場。明治以降は海水浴場や別荘地として知られるようになりました。街道の宿場が、時代とともに別の役割を見つけた例です。
考えてみよう
- 問一雨の呼び名を、五つ集めてみましょう(五月雨・時雨など)。
- 問二同じ天気でも季節で名前が変わるもの——三つ挙げてみましょう。
- 問三広重の雨の絵を探して、線の引き方を見比べてみましょう。
答えはひとつではありません。声に出して、外に出て、確かめながらどうぞ。
豆知識——
天気に名前をつけるのは、暦の考え方と同じです。
七十二候も、
五日ごとに
名前をつけていました。
細かく名前をつけるほど、細かく見えるようになります。