十二
江 戸 の 生 き も の 学 ・ 十 二
蛙が鳴き、みみずが出て、筍が生える。蚕が桑を食べ、蛍が飛び、鷹の子が飛び方を覚える——夏の候で、一年の暦がひとめぐりします。
いまのことば
夏の七十二候は、生きものが「育つ」記録。
生まれ、食べ、飛ぶことを覚えるまでを、五日ごとに追いかける。
夏のみつけかた
夏の始まりは蛙始鳴——蛙が鳴きはじめるころ。続いて蚯蚓出、竹笋生。冬の候が「耐える」記録、春の候が「兆し」の記録だったとすれば、夏の入口は土の中から出てくる記録です。
夏の候には、人の仕事と重なる名前がまじります。蚕起食桑——蚕が桑をさかんに食べはじめるころ。紅花栄——紅花が咲きそろうころ。麦秋至——麦が実るころ。養蚕の暦も、染め物の暦も、麦刈りの暦も、生きものの暦と同じ一本の上にありました。
腐草為蛍——腐った草が蒸れて蛍になる、という候もあります。蛍が水辺の草むらから湧くように現れるのを、そう見立てたのでしょう。そして夏の終わりは鷹乃学習——鷹の幼鳥が飛ぶことを覚えるころ。生きものの「練習」に名前をつけた候です。夏は大雨時行で閉じ、次は涼風至——秋の候へ戻ります。
冬・秋・春、そしてこの夏。これで七十二候が一巡しました。五日ごとに名前がついた一年は、外に出る理由が七十二回ある一年でもあります。
考えてみよう
- 問一今日から五日間、同じ場所を毎日見に行って、変化を一行ずつ書いてみましょう。
- 問二あなたの町の夏に名前をつけるとしたら。五日ごとの候を三つ作ってみましょう。
- 問三生きものが「練習している」ところを、どこかで見つけられるでしょうか。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——七十二候の名前には、日本で作りかえられたものがあります。もとになった中国の暦では、立夏の末候は「王瓜生」(からすうりが実りはじめる)。日本では「竹笋生」——その土地の生きものに合わせて、暦は書きかえられてきました。