十七
東 海 道 ・ 庄 野 宿
突然の夕立に、坂道の旅人たちが駆け出す——広重「庄野白雨」は、蒲原の雪と並ぶ五十三次の最高傑作です。
いまのことば
庄野は伊勢国の小さな宿場。
広重は、ここを舞台に「白雨(にわか雨)」の一瞬を描いた。
描かれた一瞬
竹やぶが風にしなり、駕籠かきは駆け、蓑の男は前かがみに急ぐ。斜めに走る雨の線——広重の「庄野白雨(しょうのはくう)」は、雨の「音」まで聞こえると評される一枚です。
蒲原の雪(第六章)が「静」の傑作なら、庄野の雨は「動」の傑作。しかも描かれているのは、雨そのものではなく、雨に反応する人間たちの動きです。景色は、人がいてはじめて物語になる——広重の構図の秘密です。
庄野宿自体は小さな宿場で、絵の坂道がどこかも、実ははっきりしません。それでも「庄野」の名は、この一枚で永遠になりました。
考えてみよう
- 問一夕立に降られたときの体の動きを思い出してみましょう。絵の人たちと同じですか。
- 問二「静の蒲原・動の庄野」。あなたはどちらの絵に惹かれますか(画像を検索して見比べを)。
- 問三雨・雪・風。天気を絵や写真で表すとき、何を描けば伝わるでしょう。
答えはひとつではありません。声に出して、外に出て、確かめながらどうぞ。
豆知識——「白雨」は夕立のこと。ゴッホをはじめ、広重の雨の描き方はヨーロッパの画家たちに衝撃を与え、模写も残っています。庄野の雨は、海を渡って世界の美術史に降りました。