六十
百 人 一 首 ・ 六 十 番 小式部内侍
大江山 いくのの道の 遠ければ
まだふみも見ず 天の橋立おほえやま いくののみちの とほければ
まだふみもみず あまのはしだて
いまのことば
大江山を越え、生野を通る道は遠いので、
まだ天の橋立を踏んでもいませんし、
母からの文(手紙)も見ておりません。
ことばの景色
この歌には有名な逸話がついています。小式部内侍は五十六番和泉式部の娘。「歌は母に作ってもらっているのだろう」とからかわれ、その場で即興に返したのがこの一首だと伝わります。
「ふみ」が「踏み」と「文(手紙)」の掛詞。「まだ橋立を踏んでもいない」と「まだ母の手紙も見ていない」を同時に言って、からかいを、その場で腕前の証明に変えた。
大江山・生野・天の橋立は、いずれも丹後(いまの京都府北部)へ向かう道筋の地名。母の和泉式部が夫とともに丹後にいたことが背景にあります。地名を順に並べるだけで、距離が感じられる作りです。
考えてみよう
- 問一からかわれたとき、怒らずに返す方法を考えてみましょう。
- 問二地図で大江山・生野・天の橋立をたどってみましょう。
- 問三地名を三つ並べて距離を表す文を作ってみましょう。
答えはひとつではありません。声に出して、外に出て、確かめながらどうぞ。
豆知識——
天の橋立は日本三景のひとつです。
砂が
細長く
積もってできた
地形で、
地理の間の
目で
見ると、
波と川が何千年もかけて作った砂の道です。