五十九
百 人 一 首 ・ 五 十 九 番 赤染衛門
やすらはで 寝なましものを 小夜更けて
傾くまでの 月を見しかなやすらはで ねなましものを さよふけて
かたぶくまでの つきをみしかな
いまのことば
ためらわずに、さっさと寝てしまえばよかったのに——
夜が更けて、
月が西に傾くまで待ってしまいました。
ことばの景色
「来る」と言われて待ち、来なかった夜の歌です。二十一番の素性法師も同じ場面でした。ちがうのは「やすらはで」——ためらわずに、という後悔の向き方。相手ではなく、自分の判断を悔やんでいます。
「傾くまでの月」——月の位置が時計になっている。時計のない時代、夜の長さは空で測りました。三十番の有明の月も、同じ役目を果たしています。
作者の赤染衛門は中古三十六歌仙・女房三十六歌仙のひとり。この歌は、自分のことではなく姉妹に代わって詠んだものと伝えられます。和歌には、人に代わって詠む「代作」という仕事がありました。
考えてみよう
- 問一待ってしまったことを後悔した経験はありますか。
- 問二時計を見ずに時間を知る方法を、三つ考えてみましょう。
- 問三二十一番と読み比べて、後悔の向きの違いを書いてみましょう。
答えはひとつではありません。声に出して、外に出て、確かめながらどうぞ。
豆知識——赤染衛門は『栄花物語』の作者とする説があります。たしかなことは分かっていませんが、宮中の女性たちが散文も書いていた時代だったことは確かです。