十一
故 事 成 語 ・ 十 一
心配しすぎた人の話。ただし、この話には続きがあります。
『列子』より
いまのことば
しなくてよい心配のこと。取り越し苦労。
「杞」は国の名前、「憂」は心配すること。
ことばの景色
杞という国に、空が落ちてきて身の置き所がなくなるのではないかと心配し、食べることも眠ることもできなくなった人がいました。それを心配した人が説明に行きます。「空は気が集まったもの。落ちてはこない」——そう聞いて、その人はやっと安心しました。
ここで終われば「無用の心配」の話です。けれど『列子』にはさらに別の人が現れて、「天地がいつか壊れないとは言い切れない」と述べる場面が続きます。つまり、笑って終わりの話ではないのです。
「心配するな」と言い切るのではなく、「分からないことは分からない」と置いておく——『列子』は、道家の系統に数えられる書物です。同じ流れの『荘子』からは井の中の蛙や朝三暮四が生まれました。
考えてみよう
- 問一いま心配していることを書き出し、「起きたらどうするか」まで書いてみましょう。
- 問二心配は、まったくむだだと思いますか。
- 問三分からないことを、分からないまま置いておけますか。
答えはひとつではありません。声に出して、外に出て、確かめながらどうぞ。
豆知識——
空が
落ちてくるかを
本気で
考えるのは、
いまで言えば天文学の入口でもあります。
科学の間には、
江戸の
人が
空を
確かめるために
作った
反射望遠鏡の
話があります。