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中学校と高校の英語の授業は、学習指導要領で「授業は英語で行うことを基本とする」と定められている。ただし、これは日本語を一切使わないという意味ではない。文部科学省の解説は、生徒が英語に触れる機会を増やし、授業そのものを「実際のコミュニケーションの場面」にすることがねらいだと説明し、そうした授業であれば必要に応じて補助的に日本語を用いることも考えられる、と書いている。
出典:文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)」本文PDF/文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」本文PDF/文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語編」/文部科学省「平成29年改訂の小・中学校学習指導要領に関するQ&A(外国語,外国語活動に関すること)」
学習指導要領は何と書いているか(中学校と高校の条文)
中学校の学習指導要領は、外国語科(英語)の「指導計画の作成と内容の取扱い」の中で、次のように定めている。
「生徒が英語に触れる機会を充実するとともに,授業を実際のコミュニケーションの場面とするため,授業は英語で行うことを基本とする。その際,生徒の理解の程度に応じた英語を用いるようにすること。」(中学校学習指導要領 第2章第9節 外国語 第2 英語 3(1)エ)
高校の学習指導要領にも、ほぼ同じ文が置かれている。
「生徒が英語に触れる機会を充実させるとともに,授業を実際のコミュニケーションの場面とするため,授業は英語で行うことを基本とする。その際,生徒の理解の程度に応じた英語を用いるようにすること。」(高等学校学習指導要領 第2章第8節 外国語 第3款 1(6))
高校の専門学科で学ぶ「英語」の教科(総合英語・ディベート・ディスカッション・エッセイライティング)についても、同じ文が「各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い」に書かれている。つまり、中学校から高校まで、英語の授業は「英語で行うことを基本とする」という同じ決まりの上に組み立てられている。
| 学校 | 学習指導要領の中の場所 |
|---|---|
| 中学校(外国語科・英語) | 第2章第9節 外国語 第2 英語 3「指導計画の作成と内容の取扱い」(1)エ |
| 高校(外国語科) | 第2章第8節 外国語 第3款「英語に関する各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い」1(6) |
| 高校(専門学科の英語科) | 第3章第13節 英語 第3款「各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い」1(6) |
文の後半にある「生徒の理解の程度に応じた英語を用いるようにすること」が、前半と同じくらい大事な部分である。英語で話せばよい、ではなく、生徒が分かる英語で話す、という条件がついている。
中学校では、今回の改訂で「新たに」入った決まり
この決まりは、高校のほうが先にあった。中学校の解説は、次のように経緯を説明している。
「平成21年改訂の高等学校学習指導要領で『授業は英語で行うことを基本とする』という規定が導入され,高等学校における指導改善が図られているが,今回の改訂で中学校でも同様の規定を盛り込む」(中学校学習指導要領解説 外国語編 第2章)
中学校の解説の第1章「外国語科改訂の趣旨と要点」にも、「授業は英語で行うことを基本とすることを新たに規定した。」と1行で書かれている。中学校に入れた理由について、解説は、小学校の外国語活動で先生と児童が英語を豊富に使っていること、それを経験した児童の「英語が使えるようになりたい」という意欲の高さを、中学校の学びに生かすためだと述べている。
| 時期 | 何が決まったか |
|---|---|
| 平成21年改訂(高校) | 高校の学習指導要領に「授業は英語で行うことを基本とする」が入った |
| 平成29年改訂(中学校) | 中学校の学習指導要領にも同じ決まりが「新たに規定」された |
| 平成30年改訂(高校) | 高校の新しい学習指導要領でも同じ文が続いている(第3款 1(6)) |
「英語で行う」とは、日本語を使わないことではない
保護者の方からよく出るのが、「英語だけの授業で、うちの子はついていけるのか」という心配である。この点について、文部科学省はQ&Aではっきり答えている。
問12は「『授業は英語で行うことを基本とする』とされていますが,どのような場面においても日本語を使って指導することは望ましくないのでしょうか。」という問いである。答えは次のとおりである。
「この規定の趣旨は,いかに生徒に英語使用を促すか,という点にあります。」「日本語の使用を全く否定するわけではありませんが,そうした工夫が十分になされているなら,日本語を用いる場面はずいぶん減少するはずです。」(文部科学省 Q&A 問12)
中学校の解説も、同じことを別の言い方で書いている。「授業は英語で行うことを基本とする」のポイントは「英語に触れる機会」と「実際のコミュニケーションの場面」であり、「そうした趣旨の授業展開であれば,必要に応じて補助的に日本語を用いることも考えられる」としている。
つまり、決まりの中心は「日本語禁止」ではなく、英語を使う時間を授業の中心に置くことにある。解説はこれを、「英語による言語活動を行うことを授業の中心に据えることを意味する」と説明している。その理由として挙げられているのは、生徒が日常生活で英語に触れる機会が非常に限られている、という事実である。
先生に求められている「分かる英語」の工夫
「生徒の理解の程度に応じた英語」とは何かについて、中学校の解説は具体的に書いている。まず、先生が生徒の理解度に注意を払わずに、ただ英語で授業をすればよいということではない、と断っている。そのうえで、次のような工夫を挙げている。
- 挨拶や指示(教室英語)だけでなく、説明・発問・課題の提示を、生徒の分かる英語で話し掛ける
- 発話の速度や明瞭さを調整する
- 使う語句や文を、より平易なもので言い直す・繰り返す・具体的な例を示す
- すでに習った言語材料を使って、教科書の内容を説明したり、生徒とやり取りしたりする
Q&A 問12でも、平易なものに言い直す、繰り返す、ICTも活用して具体的な例や視覚情報を示す、といった工夫が挙げられている。解説は、こうした工夫をした先生の英語が「生徒にとって効果的なインプットとなる」と述べている。
また解説は、「授業は英語で行う」とは「指導言語を単に日本語から英語に変えることで済むものと誤解してはならない」とも書いている。日本語での文法説明や本文の和訳に偏った授業をしていたのなら、その授業のあり方自体を見直し、必要な意味内容をどう英語で伝えるかを考えて工夫する、という意味が込められている、という説明である。
英語が苦手な生徒への配慮も書かれている
中学校の解説には、英語でコミュニケーションを図ることへの苦手意識が強い生徒への配慮の例も書かれている。「書くこと」の指導であれば、次のような工夫が考えられる、としている。
- 簡単な語句や文を用いて、段階的に文章を書く練習を取り入れる
- 日頃から自分の考えや気持ちを表現する活動を繰り返し行う
- 短い文でもメールで要点を伝えるなど、実際に相手に伝える活動を行う
こうした活動を通して、生徒の意欲を高めながら書く機会を増やす工夫をすること、と解説は述べている。英語で授業をすることと、苦手な生徒を置いていかないことは、解説の中で同じ段落に並べて書かれている。
なお、それぞれの学校や先生が、実際の授業でどのくらい英語を使い、どの場面で日本語を使っているかは、学校ごとに違う。お子さんの授業の進め方を知りたいときは、通っている学校の先生にご確認ください。
先生自身の英語についての考え方
中学校の解説には、先生の英語そのものについての記述もある。英語を母語としない先生は、日常的に英語を使う人とは違う英語を使うことをためらう傾向が見られることがある、としたうえで、生徒が先生の話す英語に触れることも重要だ、と書いている。
理由として、解説は、現代世界では様々な国や地域で英語が使われており、異なる英語に触れる機会をもつことは重要だ、と述べている。そして、生徒が自分の英語に自信をもって堂々と使えるようになるためには、授業で触れる先生の英語使用に対する態度と行動が大きな影響力をもつ、としている。
解説が「まず教師自身がコミュニケーションの手段として英語を使う姿勢と態度を行動で示していくことが肝心である」と書いているのは、この考え方による。
保護者が家で知っておくとよいこと
ここからは当社の考え方になる。学習指導要領と解説が書いている内容を踏まえると、家庭で受け止めておくとよい点は次のとおりだと考えている。
- 「先生がずっと英語で話している」のは、学習指導要領の決まりにそった授業の形である。英語を使う時間を授業の中心に置くことが、決まりのねらいになっている。
- ただし、日本語を一切使わないことは求められていない。分からないまま進んでいると感じるときは、まず学校の先生に相談してよい。
- 決まりの理由は「日常生活で英語に触れる機会が非常に限られている」ことにある。家で英語の音を聞く時間は、授業の外でその機会を少し足すことになる。
- 「間違えずに話す」ことより「実際に使ってみる」ことが授業の中心にある。家で英語を口にしたときは、正しさより、使ってみたことを言葉にして返す。
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