CCN 寺子屋
生物の間へ戻る

江 戸 の 生 き も の 学 ・ 十

雁が北から渡ってくる。こおろぎが戸口で鳴く。もみじとつたが色づく——秋の候は、動くものと染まるものの記録です。

いまのことば

秋の七十二候しちじゅうにこうは、渡り鳥の到着と、虫の声の引っ越しと、葉の色の変化を追う。
気温が下がるにつれて、生きものの世界は大移動する。

秋のみつけかた

秋の候には、こんな名前が並びます。鴻雁来(こうがんきたる)——雁が北の国から渡ってくるころ。蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)——秋が深まり、虫が戸口まで来て鳴くころ。楓蔦黄(もみじつたきばむ)——もみじやつたが色づくころ。

面白いのは「蟋蟀在戸」です。虫の声が、草むらから家の戸口へ近づいてくる——寒くなるにつれ、虫が暖かい人家のそばへ移動する様子を、五文字が正確に観察しています。生物の間・第四章の「虫売り」の季節の終わり方でもあります。

紅葉の色づきは、最低気温が下がると進むとされます。桜前線が北から南へ下る「紅葉前線」——春(ソメイヨシノの章)と対になる、秋の日本列島の動きです。

考えてみよう

答えはひとつではありません。声に出して、外に出て、確かめながらどうぞ。

豆知識——雁の編隊がV字に飛ぶのは、前の鳥の羽が起こす上昇気流に乗って体力を節約するためと考えられています。渡りの隊列は、何千キロを飛ぶための省エネ技術です。
前へ次へ