十一
江 戸 の 生 き も の 学 ・ 十 一
東の風が氷をとかす。うぐいすが鳴く。割れた氷の間から魚がはね上がる——春の候は、固まっていた世界が動き出す音でできています。
いまのことば
春の七十二候は、氷がとけ、声が戻り、生きものが動き出す記録。
立春は、寒さの底で「兆し」を見つける目の訓練だった。
春のみつけかた
暦の上の春は、まだ寒い二月に始まります。最初の候は東風解凍(はるかぜこおりをとく)——東からの風が氷をゆるめるころ。続いて黄鶯睍睆(うぐいすなく)、そして魚上氷(うおこおりをいずる)——割れた氷の下から魚が姿を見せるころ。
どの候も、春「らしさ」ではなく春の「兆し」を見ています。まだ寒い。でも風向きが変わった。まだ雪がある。でも水音がした。——季節の変化は、ピークではなく兆しから読む。これが七十二候の目です。
冬(第九章)・秋(第十章)とあわせて、これで三つの季節がそろいました。うぐいすの「ホーホケキョ」は、実は最初は下手で、春の間に上達していきます。初鳴きから聞き比べてみてください。
考えてみよう
- 問一いまの季節の「次の季節の兆し」を、ひとつ外で見つけてきましょう。
- 問二うぐいすの鳴き声の上達を、春に定点観察してみましょう(同じ場所・同じ時間)。
- 問三「ピークで気づく」のと「兆しで気づく」のでは、何が違うでしょう(季節以外でも)。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——「うぐいす=ホーホケキョ」ですが、あの声はさえずり(オスの縄張り宣言)で、ふだんは「チャッチャッ」と地味に鳴きます(笹鳴き)。声をふた通り知っていると、冬のやぶの中のうぐいすにも気づけます。