九十一
百 人 一 首 ・ 九 十 一 番 後京極摂政前太政大臣
きりぎりす なくや霜夜の さむしろに
衣かたしき 獨りかも寝むきりぎりす なくやしもよの さむしろに
ころもかたしき ひとりかもねむ
いまのことば
こおろぎが鳴いている、霜の降りる夜の
冷たいむしろの上で——
衣を片方だけ敷いて、ひとりで寝るのだろうか。
ことばの景色
「さむしろ」が掛詞です。「狭筵」(狭い敷物)と「寒し」。敷物の狭さと、夜の寒さが一語に同居している。
「衣かたしき」は着物の片袖だけを敷いて寝ること。二人なら互いの袖を敷き合う。だから「かたしき」は、そのまま「ひとり」を意味します。道具の使い方が、そのまま状況の説明になっている。
作者は九条良経。摂政・太政大臣まで進んだ公卿で、歌人としては藤原良経と呼ばれます。『新古今和歌集』の仮名序を書いた人でもあります。
考えてみよう
- 問一虫の声を季節ごとに聞き分けてみましょう。
- 問二道具の使い方で状況を表す文を作ってみましょう。
- 問三同じ音で違う意味のことばを、あと三つ探してみましょう。
答えはひとつではありません。声に出して、外に出て、確かめながらどうぞ。
豆知識——
平安の「きりぎりす」は、いまのコオロギを指したと考えられています。
生物の間・虫売りで
読んだとおり、
鳴く虫を愛でる文化は千年続いています。