七十五
百 人 一 首 ・ 七 十 五 番 藤原基俊
契りおきし させもが露を 命にて
あはれ今年の 秋も去ぬめりちぎりおきし させもがつゆを いのちにて
あはれことしの あきもいぬめり
いまのことば
約束してくださった、あのお言葉を
命のように頼りにしてきたのに——
ああ、今年の秋も過ぎてゆくようです。
ことばの景色
待ち続けて、また一年が過ぎた——そういう歌です。「させも」は五十一番にも出てきたさしも草(ヨモギ)。その葉に置く露のように、消えやすいものを頼りにしてきた、というたとえです。
この歌の背景としては、約束が果たされないまま時間が過ぎたという話が伝えられています。ただし細かい事情については、説が分かれます。ここでは歌そのものの形を味わっておきましょう。
作者の藤原基俊は平安後期の歌人・書家で、七十四番源俊頼と並び称された人です。新しさを求めた俊頼に対し、基俊は古い型を重んじたと伝わります。
考えてみよう
- 問一待ち続けたことがありますか。どんな気持ちでしたか。
- 問二消えやすいものを頼りにする、というたとえを作ってみましょう。
- 問三五十一番の「さしも草」と読み比べてみましょう。
答えはひとつではありません。声に出して、外に出て、確かめながらどうぞ。
豆知識——新しさを求める人と、型を守る人。どの時代にも両方います。百人一首には、その両方が隣同士で並んでいます——七十四番と七十五番です。