四十八
百 人 一 首 ・ 四 十 八 番 源重之
風をいたみ 岩うつ浪の おのれのみ
砕けてものを 思ふ頃かなかぜをいたみ いはうつなみの おのれのみ
くだけてものを おもふころかな
いまのことば
風が激しいので、岩に打ちつける波が
自分だけ砕け散るように——
私ばかりが砕けるほど思い悩んでいる、このごろです。
ことばの景色
「おのれのみ」——自分だけが、という一語がこの歌の急所です。岩は動かない。砕けるのは波のほうだけ。ぶつかって傷つくのが片方だけ、という不公平さを、自然の光景がそのまま言い表しています。
「風をいたみ」は「風が激しいので」という古い言い方。「〜を…み」で「〜が…なので」という理由を表します。七十七番の「瀬を早み」も同じ形。百人一首を並べて読むと、文法まで覚えられます。
作者の源重之は三十六歌仙のひとり。清和天皇の流れをくむ清和源氏で、貞元親王の孫にあたります。皇族の血筋でありながら、官位は高くありませんでした。
考えてみよう
- 問一ぶつかって片方だけが変わるもの——身のまわりから探してみましょう。
- 問二波が岩を削るには、どれくらいの時間がかかるでしょう。
- 問三「〜を…み」の形で、短い文を作ってみましょう。
答えはひとつではありません。声に出して、外に出て、確かめながらどうぞ。
豆知識——この歌は『詞花和歌集』に収められています。『詞花集』は八代集の六番目で、全体が短い歌集。百人一首には、この小さな歌集からも五首が選ばれています。