四十九
百 人 一 首 ・ 四 十 九 番 大中臣能宣朝臣
御垣守 衛士のたく火の 夜はもえ
晝は消えつつ ものをこそ思へみかきもり ゑじのたくひの よるはもえ
ひるはきえつつ ものをこそおもへ
いまのことば
御垣を守る衛士が焚く火のように、
夜は燃え、昼は消え——
そんなふうに、私は思い悩んでいます。
ことばの景色
宮中の門を守る番人の篝火を持ち出した歌です。夜は赤々と燃え、朝になれば消される。その毎日の繰り返しが、そのまま心の繰り返しになっている。
面白いのは、誰でも見たことのある光景を選んだこと。宮中に出入りする人なら、毎晩目にする火です。特別でない風景を使うほど、たとえは強く働きます。
作者の大中臣能宣は三十六歌仙のひとり。神祇をつかさどる家の人で、祭主を務めました。火を見つめる仕事に近い家柄だったことも、この歌の選び方に関係があるかもしれません。
考えてみよう
- 問一毎日同じことを繰り返すもの——身のまわりから三つ探してみましょう。
- 問二昼と夜で様子が変わるものを観察して、記録してみましょう。
- 問三特別でない風景で、気持ちをたとえてみましょう。
答えはひとつではありません。声に出して、外に出て、確かめながらどうぞ。
豆知識——衛士は、諸国から集められて都の警備にあたった兵のこと。地方から来た人たちが、都の夜を守っていた。歌の中の火の向こうには、そういう暮らしがあります。