九
故 事 成 語 ・ 九
痛みと苦みで、忘れないようにする。呉と越の、二代にわたる話です。
いまのことば
目的のために、長いあいだ苦労に耐えること。
「臥薪」は薪の上に寝ること、「嘗胆」は胆をなめること。
ことばの景色
呉王・夫差は、父の仇を忘れないために薪の上に寝たと伝わります。越王・勾践は敗れたのち、苦い胆をそばに吊るして、毎日なめて屈辱を思い出した。そして最後には呉を破りました。
ここが面白いところです——「嘗胆」だけなら『史記』の越王勾践の巻に出てきます。けれど「臥薪」のほうは、『史記』には書かれていません。『十八史略』などの後の本に見える話です。
「臥薪嘗胆」と四文字そろった形が確かめられるのは、十一世紀の蘇軾という詩人の文章からとされます。物語は紀元前五世紀、ことばがそろったのは千五百年後——ことばには、生まれた日があります。
考えてみよう
- 問一忘れないための工夫を、自分なりに三つ考えてみましょう。
- 問二長く努力を続けるのに、痛みは役に立つと思いますか。
- 問三有名な話でも「どの本に書いてあるか」を調べる大切さを考えてみましょう。
答えはひとつではありません。声に出して、外に出て、確かめながらどうぞ。
豆知識——
この寺子屋が大事にしている「底本」の考え方が、まさにこれです。
こころの間の
実語教も
童子教も、
どの本のどの版から採ったかを決めてから書いています。