十四編
学 問 の す ゝ め ・ 十四編 心事の棚卸し
人の世を渡る有様を見るに、心に思うよりも案外に悪をなし……—— 福澤諭吉『学問のすゝめ』十四編より
いまのことば
お店が品物をたな卸しするように、
ときどき、自分の心と行いをたな卸ししなさい。
きょうの暮らしでいうと
商人は定期的に在庫を数え、帳簿と実物のずれを確かめます。福澤は同じことを心にやれと言います。やろうと思っていたこと(帳簿)と、実際にやったこと(実物)のずれを数える。
人は、自分では思ってもみなかった悪をなし、思ってもみなかった怠けをする——この編の書き出しは、耳が痛いほど正直です。悪気がなくても、ずれは積もります。だから定期的に数える仕組みが要るのです。
年末でも、学期の終わりでも、寝る前の5分でもいい。「今年やると言ったこと、どこまでやった?」——この一問が、心の棚卸しの始まりです。
考えてみよう
- 問一この1ヶ月の「やると言ったこと」と「やったこと」を、ためしに数えてみましょう。ずれはどのくらい?
- 問二ずれが大きくなる原因は、計画のせいでしょうか、実行のせいでしょうか。
- 問三自分の棚卸しを、いつ・どうやってやる習慣にできそうですか。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——この編には「世話」という言葉の分析もあります。世話には「保護」と「指図」のふたつの意味があり、保護だけして指図しない、指図だけして保護しない——そのちぐはぐが人間関係を壊す、という観察です。