十三編
学 問 の す ゝ め ・ 十三編 怨望の人間に害あるを論ず
その交際に害あるものは怨望より大なるはなし。—— 福澤諭吉『学問のすゝめ』十三編より
いまのことば
人間の欠点のなかで、いちばん害があるのは「ねたみ」。
ねたみだけは、誰の得にもならない。
きょうの暮らしでいうと
欲張り、ぜいたく、悪口。人の欠点はいろいろありますが、福澤は「怨望(えんぼう)」——ねたみ・そねみを最悪と断じます。理由が鋭い。
欲張りは、使い方しだいで向上心になる。ぜいたくは、ときに文化を育てる。でもねたみだけは、相手を引きずり下ろすだけで、何も生み出さない。自分の状況は一ミリも良くならないのに、心だけがすり減っていく。
ではねたみはどこから来るか。福澤の答えは「塞がり」です。言いたいことが言えず、やりたいことができない環境が、人をねたみに向かわせる。だから風通しを良くせよ、と。個人の心がけの話を、環境の話にまで掘り下げています。
考えてみよう
- 問一うらやましい気持ちが「よし、自分も」に変わるときと、ねたみに変わるとき。何が違うのでしょう。
- 問二ねたみが生まれやすい場所(クラス・SNSなど)には、どんな「塞がり」がありそうですか。
- 問三だれかの成功を素直に祝えたとき、自分の心はどうなっていましたか。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——この編でいう「怨望は窮より生ず」の窮とは、貧しさではなく「言路の塞がり」——意見の通り道がないこと。風通しの悪い組織ほどねたみが湧く、という洞察は、現代の組織論とそのまま重なります。