十一編
学 問 の す ゝ め ・ 十一編 名分をもって偽君子を生ずるの論
名分をもって偽君子を生ずるの論—— 福澤諭吉『学問のすゝめ』十一編より
いまのことば
「立場が上だから従え」という理屈は、
従うふりだけ上手な、うわべの人間を育ててしまう。
きょうの暮らしでいうと
「名分」とは、上下の立場の名目のこと。上の言うことに黙って従え、という仕組みは一見きちんとして見えます。でも福澤は、その中で何が育つかを見ました。
育つのは、従順な善人ではなく、上の前でだけ従うふりをする「偽君子」です。力で押さえつけられた人は、心から納得したわけではないので、見ていないところで手を抜き、陰で不満を言うようになる。
先生の前でだけ良い子、監督の前でだけ真面目——思い当たる風景です。人を動かすのは立場の力ではなく、理屈と信頼だ、というのがこの編の芯です。
考えてみよう
- 問一「見ている人がいるときだけがんばる」のは、なぜ起きるのでしょう。
- 問二あなたが心から従いたくなるのは、どんな人ですか。
- 問三もし自分が上の立場になったら、「偽君子」を生まないために何をしますか。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——福澤は上下関係そのものを否定してはいません。役割の上下は必要。ただし、それを人格の上下と混同したときに害が生まれる——という区別が、この編の読みどころです。