九編
学 問 の す ゝ め ・ 九編 学問の旨を二様に記して
人の心身の働きを細かに見れば、これを分かちて二様に区別すべし。—— 福澤諭吉『学問のすゝめ』九編より
いまのことば
働きにはふたつある。自分の暮らしを立てる働きと、
世の中のために積み上げる働きと。
きょうの暮らしでいうと
ふるさと中津の旧友に宛てた手紙の形をした編です。だからか、語りがやわらかい。
自分と家族が食べていくための働き。それは大事だが、それだけで満足するのは「蟻の門人」だと福澤は言います。蟻も巣を作り食料をたくわえる。人がそれだけなら、蟻と同じではないか、と。
人には、もうひとつの働きがある。いまの世の中は、先人が積み上げてくれたものの上にある。なら自分も、次の人のために何かを積んで渡す。橋も、学校も、本も、誰かがそうして残したものです。自分の暮らし+次の人への上乗せ。ふたつそろって一人前、という人生の設計図です。
考えてみよう
- 問一いまのあなたの暮らしの中で、「昔の人が積み上げてくれたもの」は何がありますか。
- 問二食べていくための働きのほかに、やってみたい「積み上げの働き」はありますか。
- 問三「蟻と同じではないか」と言われて、どう答えますか。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——中津(大分県)は福澤の故郷です。下級武士の子として育った福澤は、身分制度の理不尽を身をもって知っていました。『学問のすゝめ』の激しさの根には、故郷での実体験があります。