学 問 の す ゝ め ・ 八編 わが心をもって他人の身を制すべからず
「あなたのためを思って」——この言葉のこわさを、福澤は150年前に見抜いていました。この編が例に挙げるのは、遠い国の話ではなく、親子や夫婦という、いちばん近い間柄です。
親が子の進路をすべて決める。夫が妻の行動を縛る。当時はあたりまえだったことに、福澤は「それは相手を一人の人間として見ていない」と切り込みます。愛情と支配は、似た顔をしてやってくるのです。
友だち関係でも起きます。「親友なんだから同じでいようよ」が、いつのまにか相手を縛る鎖になる。相手を大切にすることと、相手を自分の思いどおりにすることの違い——八編の問いは、教室にもあります。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。