七編
学 問 の す ゝ め ・ 七編 国民の職分を論ず
国民たる者は一人の身にして二ヵ条の勤めあり。—— 福澤諭吉『学問のすゝめ』七編より
いまのことば
国民には、ふたつの顔がある。
ルールに従う「客」の顔と、ルールを作る「主人」の顔と。
きょうの暮らしでいうと
あなたは学校で、決まりに従う生徒です。同時に、学級会で決まりを作る側でもあります。福澤はこれを「客」と「主人」のふたつの勤めと呼びました。
多くの人は「客」の顔しか意識しません。決まりは上から降ってくるもの、文句を言うもの。でも本当は自分が「主人」でもある——ここに気づくと、世の中への向き合い方が変わります。
お祭りの実行委員、生徒会、地域の掃除。面倒に見えるものの正体は、「主人」の側の仕事です。客だけの人生は楽ですが、主人を誰かに任せきった分だけ、自分の暮らしも人任せになります。
考えてみよう
- 問一いま、あなたが「主人」の側に立っている場面はどこですか。
- 問二「客」でいるだけの人が増えると、その集まりはどうなるでしょう。
- 問三面倒だけれど「主人の仕事」だと思って引き受けてみたいことはありますか。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——「一人にて二人前の役目」——この考え方は、いまの言葉でいう「市民」の感覚そのものです。選挙権のなかった明治初期に、福澤はすでに国民を統治の当事者として描いていました。