四
豆 腐 百 珍 を 作 る ・ 一
『豆腐百珍』の「尋常品」——ふだんの部の代表が、湯やっこ。材料はたった三つ。豆腐と、昆布と、水。だからこそ、ごまかしがききません。
いまのことば
湯やっこは、昆布を敷いた湯で豆腐を温めるだけの料理。
いちばん簡単で、いちばん豆腐の味が分かる。
作ってみよう
- 鍋に水を入れ、昆布を一枚しずめて30分ほど置く(時間があれば、が江戸流の丁寧さです)。
- 豆腐一丁を大きめに切って、そっと鍋に入れる。
- 弱めの火にかける。ぐらぐら煮立てないこと——豆腐がゆらり、と揺れるくらいで止める。
- 豆腐があたたまったら、すくって器へ。しょうゆ少々、あればかつお節や刻みねぎを。
※ 火と包丁を使うときは、必ずおうちの人といっしょに。分量は目安です。味を見ながら調えるのも、料理の学びのうちです。
味の背景
煮立てないのは、豆腐に「す」が入って固くなるから。「待つ」と「止める」だけが腕の見せどころという、引き算の料理です。
昆布のうま味(だしの章で学んだグルタミン酸)が湯にとけ出し、豆腐をそっと包む。食べ比べてみてください——昆布ありとなしで、同じ豆腐の味が変わります。
考えてみよう
- 問一昆布あり・なしで湯やっこを作り比べ、違いを言葉にしてみましょう。
- 問二「材料が少ない料理ほどごまかしがきかない」のは、なぜでしょう。
- 問三料理で「待つ」「止める」が大事な場面を、ほかにも挙げられますか。
作って食べてから考えると、答えは舌の上に見つかります。
豆知識——『豆腐百珍』の百品は「尋常品」から「絶品」まで6ランク。湯やっこは誰でも作れる尋常品ですが、本の中で軽んじられてはいません。基本のうまさを知る者だけが、絶品の値打ちも分かるからです。