三
江 戸 の 食 ・ 三
みそ汁にも、そばつゆにも、おでんにも。姿は見えないのに必ずいる——日本の料理の土台「だし」は、江戸の物流が育てました。
いまのことば
昆布は北の海から船で、鰹節は太平洋の港から。
日本中の産物が江戸と大坂に集まって、「だしの文化」が完成した。
うま味の正体
昆布は蝦夷地(北海道)から北前船で大坂へ、鰹節は土佐や紀伊から江戸へ。だしの材料は、船が運んだ全国の名産でした。料理の土台に、物流の歴史が沈んでいます。
だしのおいしさの正体は「うま味」。昆布のグルタミン酸と、鰹節のイノシン酸を合わせると、うま味はかけ算で強くなります。このうま味を世界で初めて発見・命名したのは、明治の日本の化学者・池田菊苗(1908年)。いまや「umami」は世界共通語です。
甘い・しょっぱい・すっぱい・にがい・うまい。5つめの味を、日本の台所は千年前から使いこなしていました。
考えてみよう
- 問一だし入りとだし抜きのみそ汁を飲み比べたら、違いを言葉にできますか(実験してみよう)。
- 問二「見えないけれど全体を支えているもの」は、料理のほかにもありますか。
- 問三あなたの家の「だし」は何でとっていますか。聞いてみましょう。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——「umami」が世界の科学用語になったのは、うま味を感じる受容体が舌に実在すると2000年代に確認されたから。江戸の台所の知恵が、100年かけて科学に追認された形です。