二十六
百 人 一 首 ・ 二 十 六 番 貞 信 公
小倉山 峯のもみぢ葉 心あらば
今ひとたびの みゆき待たなむをぐらやま みねのもみぢば こころあらば
いまひとたびの みゆきまたなむ
いまのことば
小倉山の峰の紅葉よ、もしお前に心があるなら、
もう一度の行幸(天皇のお出まし)まで、散らずに待っていておくれ。
ことばの景色
紅葉に「心があるなら」と語りかけ、散らないでくれと頼む——自然を人のように扱う「擬人法」の、教科書のような一首です。
美しいものは、待ってくれない。だからこそ「もう一度見せたい人」がいるとき、人は自然に語りかけたくなる。この歌は、上皇の行幸に感動した作者が「これを天皇にもお見せしたい」と詠んだものと伝わります。感動は、独り占めより、分かちたくなるものなのです。
そしてこの小倉山こそ、藤原定家が百人一首を選んだ山荘の地。選者は、自分の歌集の名前の由来になる山の歌を、ちゃんと入れていました。
考えてみよう
- 問一「この景色をあの人に見せたい」と思った瞬間はありますか。
- 問二擬人法を使って、身近な自然にひとこと語りかけてみましょう。
- 問三「小倉百人一首」の「小倉」がこの山だと知って、歌集の見え方は変わりましたか。
答えはひとつではありません。声に出して、外に出て、確かめながらどうぞ。
豆知識——貞信公は藤原忠平——平安の摂政・関白です。小倉山は京都・嵐山の対岸にあり、いまも紅葉の名所。渡月橋から見上げる山が、百人一首のふるさとです。