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百人一首・五番 猿丸大夫

奥山に 紅葉ふみ分け なく鹿の
聲きく時ぞ 秋は悲しきおくやまに もみぢふみわけ なくしかの
こゑきくときぞ あきはかなしき

お子さんと保護者の方へ。百人一首・五番 猿丸大夫を、いっしょに確かめましょう。

いまのことば

奥山に紅葉ふみ分けなく鹿のの意味は?

人里はなれた奥山で、散り敷いた紅葉を踏み分けて鳴く鹿。
その声を聞くとき、秋のさびしさが身にしみる。

ことばの景色

目に見えるのは紅葉、耳に届くのは鹿の声。視覚と聴覚をひとつの歌に重ねて、秋の深さを立体にしました。鹿の「ピィー」という高い声は、秋の求愛の声。実際に聞くと、たしかに胸に響く音です。

「悲しき」は、泣くほどの悲しみではなく、秋のしんとしたさびしさ、もの悲しさ。日本語の「もののあはれ」の感覚が、この一首に詰まっています。

紅葉を「踏み分け」て歩くのは、鹿か、それとも作者自身か——実は昔から両方の読み方があります。どちらで読むかで、景色が変わる。答えをひとつに決めない楽しみ方も、和歌の作法です。

考えてみよう

  • 問一「踏み分け」ているのは鹿と作者、どちらだと読みたいですか。理由は?
  • 問二秋を「悲しい」と感じる感覚に、共感しますか。それはなぜ生まれるのでしょう。
  • 問三秋の音を三つ、外で集めてきましょう(虫、風、落ち葉……)。

答えはひとつではありません。声に出して、外に出て、確かめながらどうぞ。

豆知識——作者の猿丸大夫さるまるだゆうは、実在がはっきりしない伝説の歌人です。奈良の春日大社周辺や京都の高雄など、「この歌の舞台」を名乗る紅葉の名所がいくつもあります——名歌は観光地まで作るのです。
原文について
この記事が扱っている『小倉百人一首』は、鎌倉時代に藤原定家が選んだとされる和歌集。江戸時代に版本・かるたとして広まりました。
原本(江戸期などの版本)は、国立公文書館 デジタルアーカイブ『百人一首抄』で画像を見られます。
このページの現代語訳・解説・設問は、株式会社士心が作成したものです。特定の校訂本にもとづくものではありません。 表記や区切り方は、読みやすさのために整えています。原文にあたるときは、上の所蔵先でお確かめください。

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