五十歩
故 事 成 語 ・ 四
五十歩にげた兵が、百歩にげた兵を「臆病者」と笑った。
——にげたことに、変わりはないのに。『孟子』より
いまのことば
たいした違いのないことを「五十歩百歩」という。
もとは、王さまの政治をいさめた、孟子のたとえ話。
ことばの景色
戦場から五十歩にげた兵士が、百歩にげた兵士を「あいつは臆病だ」と笑った——どう思いますか、と孟子は王に尋ねます。王は答えます。「同じことだ。どちらもにげたのだから」。
そこで孟子は本題に入ります。「王さま、あなたの政治も隣の国と五十歩百歩です」——自分の口で「同じことだ」と言わせてから、その言葉を王自身に向ける。相手に結論を言わせる説得術の見事な見本です。
「自分のほうがまし」と思いたいとき、その差は本当に意味のある差なのか。宿題を「30分しかやってない人」と「10分しかやってない人」——五十歩百歩は、自分にも刺さります。
考えてみよう
- 問一「自分のほうがまし」と思ったことが、実は五十歩百歩だった経験はありますか。
- 問二逆に「小さな差に見えて、決定的な差」というものもあります。例を挙げられますか。
- 問三孟子の説得術(相手に先に答えさせる)を、どこかで使えそうですか。
答えはひとつではありません。声に出して読んでから考えると、また違って見えてきます。
豆知識——孟子は孔子の教えを受け継いだ思想家。『孟子』は江戸の寺子屋でも上級の教科書でした。王への説教が、いまや小学生も使う日常語になっています。