漁夫
故 事 成 語 ・ 三
貝と鳥が、がっちり食い合ってはなれない。
そこへ通りかかった漁師が、両方まとめて捕まえた。『戦国策』より
いまのことば
二者が争っているすきに、第三者が利益を横取りする。
それが「漁夫の利」。もとは戦争を止めた、たとえ話だった。
ことばの景色
ハマグリが口を開けて日なたぼっこをしていると、シギが肉をつつく。ハマグリは殻を閉じてくちばしを挟む。「離さないと干からびるぞ」「離さないと飢え死にだぞ」——意地の張り合いのまま、どちらも動けない。そこへ漁師が来て、両方とも捕まえてしまいました。
この話は、燕の国を攻めようとする趙の王に、使者が語ったものです。「二国が争えば、強国の秦が漁師になりますよ」——王は攻撃をやめました。たとえ話ひとつが、戦争を止めたのです。
きょうだいげんかの間にお菓子がなくなる。二強が争ううちに三番手が勝つ。漁夫の利は、教室にも、スポーツにも、国と国の間にも、いまも毎日現れます。
考えてみよう
- 問一「争う二者、得する第三者」の実例を、身のまわりから探してみましょう。
- 問二シギとハマグリが両方助かる方法は、あったでしょうか。
- 問三王を説得したのは命令ではなく、たとえ話でした。たとえ話の力はどこにあるのでしょう。
答えはひとつではありません。声に出して読んでから考えると、また違って見えてきます。
豆知識——出典の『戦国策』は、中国戦国時代の説得術・交渉術の実例集。「蛇足」もこの本の出身です。二千年前の外交官たちの話術が、日本語の日常語になっています。