蛇足
故 事 成 語 ・ 二
蛇の絵をいちばん早く描き上げた男は、
得意になって、足まで描き足した。
——「蛇に足はない。それはもう蛇ではない」『戦国策』より
いまのことば
よけいな付け足しを「蛇足」という。
語源は、酒をかけた蛇の絵くらべで、勝ちを逃した男の話。
ことばの景色
楚の国で、召使いたちが一杯の酒をめぐって「地面に蛇の絵をいちばん早く描いた者が飲む」と競争しました。最初に描き終えた男は、余裕を見せて「足まで描けるぞ」と描き足した。そのすきに二番目の男が描き終えて言います。「蛇に足はない。君が描いたのは蛇ではない」——酒は二番目の男のものになりました。
やりすぎて台なしにする。完成していたのに、手を加えて壊す。テスト勉強でも、作文でも、料理でも起きることです。
「どこでやめるか」は「どこまでやるか」と同じくらい大事——二千年前の酒くらべが、それを教えてくれます。
考えてみよう
- 問一「やりすぎて台なしにした」経験はありますか。
- 問二「完成」をどうやって見きわめればよいのでしょう。
- 問三スピーチや作文の「蛇足」とは、たとえばどんな一文でしょう。
答えはひとつではありません。声に出して読んでから考えると、また違って見えてきます。
豆知識——「画竜点睛(がりょうてんせい)を欠く」は蛇足の反対で、「最後の大事なひと筆が足りない」こと。足しすぎの蛇足と、足りない点睛。ものづくりの失敗は、この二つの間で起きます。