三十七
実 語 教 ・ 第 三十七 句
それ ならい がたく わすれ やすきは夫れ習い難く忘れ易きは
おんじょうの ふさい音声の浮才
また まなび やすく わすれ がたきは又学び易く忘れ難きは
しょひつの はくげい書筆の博芸
原文 夫難習易忘 音声之浮才 又易学難忘 書筆之博芸
いまのことば
耳で聞いただけの知識は、覚えにくく、忘れやすい。
書いて身につけた学びは、覚えやすく、忘れにくい。
きょうの暮らしでいうと
実語教の終盤に、急に実用的な「勉強のコツ」が出てきます。聞くだけでは残らない。書け。
「音声の浮才」——耳から入っただけの知識は、水に浮いた葉のように流れていく、という美しい言い方です。授業を聞いて「わかった」と思ったのに、次の日に思い出せない。あの現象に、千年前の人はもう名前をつけていました。
手を動かして書くと、目と手と頭が同時に働いて、記憶が深く刻まれます。ノートを取る意味、漢字を書いて覚える意味を、この句は千年前から保証してくれています。
考えてみよう
- 問一聞いただけで忘れたことと、書いて覚えたこと。それぞれ例がありますか。
- 問二「書く」のほかに、忘れにくくする工夫を知っていますか。
- 問三今日の授業でいちばん大事だったことを、ためしにいま書き出せますか。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——現代の学習研究でも、手で書くことは記憶の定着を助けることが知られています。タブレットの時代でも、大事なことは手で書く——千年前のコツは、まだ現役です。