三十三
実 語 教 ・ 第 三十三 句
あくを このむ ものは わざわいを まねく悪を好む者は禍を招く
たとえば ひびきの おとに おうずるが ごとし譬えば響きの音に応ずるが如し
原文 好悪者招禍 譬如響応音
いまのことば
悪いことを好む人は、わざわいを自分で呼び寄せる。
ちょうど、山びこが声に応えて返ってくるように。
きょうの暮らしでいうと
山に向かって「ヤッホー」と叫べば「ヤッホー」と返ってきます。「バカ」と叫べば「バカ」と返ってくる。返ってくるものは、自分が出したものです。
行いも同じだ、とこの句は言います。意地悪をすれば、意地悪な空気が自分のまわりに集まる。乱暴な言葉を使えば、乱暴な言葉が返ってくる。だれかに罰せられるのではなく、自分の出した声が、自分に返ってくるだけなのです。
この句は次の句とふたつでひと組。悪い山びこの話のあとに、良い山びこの話が続きます。
考えてみよう
- 問一「自分が出したものが返ってきた」と感じた経験はありますか。
- 問二SNSやチャットでも「山びこ」は起きるでしょうか。
- 問三返ってきてほしい言葉を先に出すとしたら、どんな言葉にしますか。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——「禍(わざわい)」の字は、示(神さまに関わること)と咼を合わせた字。昔の人は、わざわいは外から降ってくるものと考えがちでしたが、この句は「自分が招くもの」と言い切っています。千年前として、ずいぶん近代的な考え方です。