三十二
実 語 教 ・ 第 三十二 句
ぜんを みては すみやかに おこない善を見ては速やかに行い
あくを みては たちまち さけよ悪を見ては忽ち避けよ
原文 見善者速行 見悪者忽避
いまのことば
良いことを見たら、すぐに自分もやりなさい。
悪いことを見たら、すぐにそこから離れなさい。
きょうの暮らしでいうと
この句の主役は、善悪そのものではなく「速やかに」「忽ち」——スピードです。
良いことは、迷っているうちに機会が過ぎます。ごみを拾おうか、席をゆずろうか、と考えているうちに、駅に着いてしまう。悪いことは、迷っているうちに巻き込まれます。「ちょっとだけなら」と見ているうちに、逃げにくくなる。
だから、どちらも考えこむ前に体を動かせ、というのです。良いことは反射で行い、悪いことからは反射で離れる。迷う時間こそが、いちばんの敵だと、この句は見抜いています。
考えてみよう
- 問一「やろうか迷っているうちに終わった良いこと」の経験はありますか。
- 問二悪いことから「すぐ離れる」のがむずかしいのは、どんなときでしょう。
- 問三迷わず動けるようになるには、何を決めておけばよいと思いますか。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——『論語』には「善を見ては及ばざるが如くし」という言葉があります。良いことを見たら、追いつけないものを追いかけるように急げ、という意味。洋の東西を問わず、善は「急ぐもの」とされてきました。