三十
実 語 教 ・ 第 三十 句
おのが みを たっせんと ほっする ものは己が身を達せんと欲する者は
まず たにんを たっせしめよ先ず他人を達せしめよ
原文 欲達己身者 先令達他人
いまのことば
自分が成功したいと願うなら、
まず先に、人の成功を助けなさい。
きょうの暮らしでいうと
実語教の人間関係の教えは、この句で頂上に着きます。あいさつや敬意の話を越えて、成功の順番の話です。
自分が一番になりたいなら、人を蹴落とすのが近道に見えます。でもこの句は逆を言います。先に人を押し上げよ、と。友だちに勉強を教えると、教えた自分がいちばん理解が深まります。チームメイトを活かすパスを出す選手は、結局チームに欠かせない選手になります。
人を助けることは、遠回りに見えて、自分がいちばん伸びる道——千年前の教科書が、現代のリーダー論と同じ結論に着いています。
考えてみよう
- 問一人に教えたら、自分のほうが得をした——そんな経験はありますか。
- 問二「人を蹴落とす一番」と「人を押し上げてなる一番」。何が違うでしょう。
- 問三いま、あなたが「先に達せしめる」ことができる相手はだれでしょう。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——この句は『論語』の「己達せんと欲して人を達す」とほぼ同じ言葉です。孔子の教えのなかでも「仁」を説明した大切な一節が、日本の寺子屋の教科書に、そのまま受け継がれていました。