二十四
実語教・第二十四句
ひとと して こう なき ものは人として孝無き者は
ちくしょうに ことならず畜生に異ならず
原文 人而無孝者 不異於畜生
いまのことば
人として孝無き者はの意味は?
人でありながら、育ててくれた人への心を持たない者は、
けものと変わらない。
きょうの暮らしでいうと
前の句と対になっています。智のない者は木石、孝のない者は畜生(けもの)。並べることで、人を人にしているものは何か、をあぶり出しています。
実語教の答えはふたつ。学ぶ心と、恩を感じる心。このふたつがそろって、はじめて人は人になる——それが実語教全体を貫く人間観です。
動物も親が子を育てます。でも、育ててもらったことを覚えていて、大人になってから返そうとするのは、人だけです。「ありがとう」を何年もあとに言える生きものは、人のほかにいません。
考えてみよう
- 問一「育ててもらった恩」を、あなたはいつ、どんなときに感じますか。
- 問二恩を「返す」には、どんな方法があるでしょう。相手に直接返す以外もあるでしょうか。
- 問三学ぶ心と恩を感じる心。ふたつはどこかでつながっていると思いますか。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——「恩送り」という言葉があります。受けた恩をその人に返すのではなく、別のだれかに送っていく考え方です。親から受けたものを、いつか自分の子や後輩に送る——恩はそうやって世代をこえてめぐっていきます。
原文について
この記事が扱っている
『実語教』は、平安末から鎌倉期に成立したとされる教訓書。江戸の寺子屋でもっとも広く使われた教科書のひとつです。
原本(江戸期などの版本)は、
国立公文書館 デジタルアーカイブ『実語教』で画像を見られます。
このページの現代語訳・解説・設問は、株式会社士心が作成したものです。特定の校訂本にもとづくものではありません。
表記や区切り方は、読みやすさのために整えています。原文にあたるときは、上の所蔵先でお確かめください。