第二十一章
童 子 教 ・ 第二十一章 施しの心
こころに かなしみて いちにんに ほどこせば くどく たいかいの ごとし心に悲しみて一人に施せば、功徳大海の如し
原文 悲心施一人 功徳如大海
この章の本文(第151対句〜第160対句)
- 被打獄卒杖 人尤可行施獄卒の杖(つえ)に打たるる 人尤(もつと)も施しを行ふべし
- 布施菩提粮 人尤不惜財布施は菩提の粮(かて) 人尤(もつと)も財を惜しまざれ
- 財宝菩提障 若人貧窮身財宝は菩提の障(さは)り 若(も)し人貧窮の身にて
- 不布施無財 見他布施時布施すべき財無くば 他の布施を見る時
- 可生随喜心 悲心施一人随喜の心を生ずべし 心に悲しみて一人(いちにん)に施せば
- 功徳如大海 為己施諸人功徳大海(だいかい)の如し 己(おのれ)が為に諸人に施せば
- 得報如芥子 聚砂為塔人報ひを得ること芥子の如し 砂(いさご)を聚(あつ)めて塔を為(す)る人
- 早研黄金膚 折花供仏輩早く黄金の膚(はだへ)を研(みが)く 花を折りて仏に供(くう)ずる輩(ともがら)は
- 速結蓮台趺 一句信受力速(すみや)かに蓮台の趺(あなうら)を結ぶ 一句信受の力
- 超転輪王位 半偈聞法徳転輪王の位に超へたり 半偈(はんげ)聞法(もんぼう)の徳
いまのことば
相手を思う心からの施しは、一人へのものでも海のように大きい。
自分のための施しは、大勢にしても芥子粒ほどの値打ちしかない。
きょうの暮らしでいうと
お金の話でも量の話でもなく、「何のために」がすべてを決める——施しの章です。心からの一人分は海より大きく、見返り目当ての百人分は芥子粒より小さい。
そして童子教は、施すものがない人のための道も用意しています。「他の布施を見る時、随喜の心を生ずべし」——人の善い行いを見て、心から「いいなあ」と喜ぶこと。それだけで施しと同じ功徳がある、と。
募金ができなくても、席をゆずる人を見て温かい気持ちになる。それも立派な参加だと、千年前の教科書は言うのです。善いことの輪は、する人と、喜ぶ人の両方で回っています。
考えてみよう
- 問一見返りを考えない親切を、最近いつしましたか。
- 問二人の善い行いを見て、心が動いた場面を思い出せますか。
- 問三「自分のための親切」は、なぜ小さくなってしまうのでしょう。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——「砂を聚めて塔を為す」——子どもが遊びで砂の塔を作ることさえ、敬う心があれば尊い行いになる、という句です。行いの大小ではなく心の向き。この考え方は法華経に由来します。