第二十二章
童 子 教 ・ 第二十二章 結び——幼き人を導くために
ようどうを ゆういんせん ため いんがの どうりを じゅうす幼童を誘引せん為、因果の道理を住す
原文 為誘引幼童 住因果道理
この章の本文(第161対句〜第165対句)
- 勝三千界宝 上須求仏道三千界の宝に勝(まさ)れり 上(かみ)は須(すべから)く仏道を求む
- 中可報四恩 下偏及六道中は四恩を報ずべし 下は偏(ひとへ)に六道に及ぶ
- 共可成仏道 為誘引幼童共に仏道成るべし 幼童を誘引せん為
- 住因果道理 出内典外典因果の道理を住(ぢう)す 内典外典より出でたり
- 見者勿誹謗 聞者不生笑見る者誹謗すること勿れ 聞く者笑を生ぜざれ
いまのことば
この書は、幼い人たちを良い道へ導くために、
行いと結果のことわりを、内典と外典から集めて記した。
きょうの暮らしでいうと
最後に童子教は、自分がなぜ書かれたかを明かします。幼い人を導くため。仏の教え(内典)と、儒学など世間の書(外典)の両方から、大事なことわりを集めた、と。
「上は仏道を求め、中は四恩に報い、下は六道に及ぶ」——高くは真理を求め、身近には四つの恩(父母・師・世の中・天地)に報いる。遠い理想と足元の恩返しを、ひとつの生き方の中に両方置くのが、この教科書の設計でした。
「見る者誹謗すること勿れ、聞く者笑を生ぜざれ」——この書を見て悪く言わず、聞いて笑わないでほしい。千年前の編者の静かな願いの一文で、全165対句は閉じられます。あなたはいま、その願いの受け取り手になりました。
考えてみよう
- 問一全二十二章のなかで、いちばん心に残った教えはどれですか。
- 問二「四恩」(父母・師・世の中・天地の恩)のうち、いま自分がいちばん報いたいのはどれでしょう。
- 問三千年後の子どもたちに、あなたなら何を書き残しますか。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——実語教が「学問の始め」なら、童子教は「ふるまいの始め」。二冊そろって、江戸の子どもたちの最初の教養でした。こころの間で両方を読み終えたあなたは、寺子屋の「読み書き」の芯を、千年ぶんまるごと受け取ったことになります。