第十五章
童 子 教 ・ 第十五章 蛍の光、窓の雪
ほたるを あつめて ともしびと す螢を聚めて燈とす
原文 聚螢為燈矣
この章の本文(第81対句〜第92対句)
- 安身起懈怠 匡衡為夜学身安ければ懈怠(けだい)起る 匡衡(きやうこう)は夜学の為に
- 鑿壁招月光 孫敬為学文壁を鑿(うが)ちて月光を招く 孫敬(そんけい)は学文の為に
- 閉戸不通人 蘇秦為学文戸を閉ぢて人を通さず 蘇秦は学文の為に
- 錐刺股不眠 俊敬為学文錐を股(もも)に刺して眠らず 俊敬(しゆんけい)は学文の為に
- 縄懸頸不眠 車胤好夜学縄を頸(くび)に懸(か)けて眠らず 車胤(しやいん)は夜学を好み
- 聚螢為燈矣 宣士好夜学螢を聚(あつ)めて燈(ともしび)とす 宣士(せんし)は夜学を好み
- 積雪為灯矣 休穆入意文雪を積んで灯(ともしび)とす 休穆(きうぼく)は意(こころ)に文を入れ
- 不知冠之落 高鳳入意文冠(かんむり)の落つるを知らず 高鳳(かうほう)は意(こころ)に文を入れ
- 不知麦之流 列寔乍織衣麦の流るるを知らず 列寔(れつしよく)は衣(きぬ)を織り乍(なが)ら
- 誦口書不息 倪寛乍耕作口に書を誦(じゆ)して息(いき)せず 倪寛(げいくわん)は耕作し乍(なが)ら
- 腰帯文不捨 此等人者皆腰に文を帯(たい)して捨てず 此等(これら)の人は皆
- 昼夜好学文 文藻満国家昼夜学文を好んで 文藻国家に満つ
いまのことば
貧しくて灯りが買えなくても、蛍を集めて灯りにし、雪明かりで書を読んだ。
昔の学びの人たちは、そうまでして学んだ。
きょうの暮らしでいうと
卒業式の「蛍の光」の原典が、ここにあります。車胤(しゃいん)は蛍を集めて灯りにし、雪の明かりで書を読んだ人もいた——「蛍雪の功」の故事です。
この章は苦学の人物列伝です。壁に穴をあけて隣の灯りを借りた匡衡。眠気と戦うため錐で股を刺した蘇秦。機を織りながら口で書を唱えた者、畑を耕しながら腰に本を差した者。「条件が整ったら学ぼう」と言わなかった人たちの記録です。
電気も図書館もある現代は、彼らから見れば夢のような環境です。それでも「時間がない」「集中できない」と言ってしまう私たちに、この列伝は静かに問いかけてきます。
考えてみよう
- 問一「条件が整っていないから」を理由に、始めていないことはありますか。
- 問二すきま時間で学ぶ工夫を、ひとつ実行するとしたら?
- 問三蛍雪の人たちのようながんばりと、無理をしすぎない健康。どう両立させましょう。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——唱歌「蛍の光」の歌詞「蛍の光、窓の雪」は、この蛍雪の故事から。原曲はスコットランド民謡ですが、歌詞の心は童子教が伝えてきた苦学の物語でした。