第十四章
童 子 教 ・ 第十四章 読むだけでは入らない
ならい よめども こころに いらざれば えい いねて うわごとを かたるが ごとし習ひ読めども意に入らざれば、酔い寝て讝を語るが如し
原文 習読不入意 如酔寝讝語
この章の本文(第75対句〜第80対句)
- 静性案義理 習読不入意性(せい)を静めて義理を案ぜよ 習ひ読めども意(こころ)に入らざれば
- 如酔寝讝語 読千巻不復酔(ゑ)い寝(いね)て讝(むつごと)を語るが如し 千巻を読むとも復せざれば
- 無財如臨町 薄衣之冬夜財無くして町を臨むが如し 薄衣(はくゑ)の冬の夜(よ)も
- 忍寒通夜誦 乏食之夏日寒を忍んで通夜(つうや)に誦(じゆ)せよ 食乏(とぼ)しきの夏の日
- 除飢終日習 酔酒心狂乱飢(うへ)を除いて終日(ひめもす)習へ 酒に酔(ゑ)ゑば心狂乱す
- 過食倦学文 温身増睡眠食過ぐれば学文に倦(う)む 身温(あたたか)なれば睡眠(すいめん)を増す
いまのことば
読んでも心に入っていなければ、酔って寝言を言っているのと同じ。
千巻読んでも復習しなければ、身についてはいない。
きょうの暮らしでいうと
実語教十五句「隣の財を計うるが如し」と対になる、童子教版の復習論です。たとえがさらに辛辣で、心に入らない音読は「酔っぱらいの寝言」だと言います。
口は動いている。声も出ている。でも心がそこにない——教科書を目で追いながら別のことを考えていた経験は、誰にでもあるはずです。「読む」と「学ぶ」の間には、心という関所があるのです。
「酒に酔えば心狂乱し、食過ぐれば学文に倦む。身温かなれば睡眠を増す」——飲みすぎ、食べすぎ、ぬくぬくしすぎは学びの敵、という体調管理の句まであります。満腹の午後の授業の眠さは、千年前から知られていました。
考えてみよう
- 問一「目では読んでいるのに頭に入っていない」とき、自分をどう立て直しますか。
- 問二心がそこにあるかどうかは、何で見分けられるでしょう。
- 問三学びがはかどる体の状態を、自分で作れていますか(睡眠・食事・温度)。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——「讝語(うわごと)」の「讝」は、言べんに閻魔の閻と書く珍しい字です。底本では活字がなく欠字になっていたほどで、字注をもとに復元しました。