第十二章
童 子 教 ・ 第十二章 一日に一字を学べば
いちにちに いちじを まなべば さんびゃく ろくじゅう じ一日に一字を学べば、三百六十字
原文 一日学一字 三百六十字
この章の本文(第64対句〜第70対句)
- 離祖附疎師 習戒定恵業祖に離れ疎師に附く 戒定恵(かいぢやうゑ)の業(ごう)を習ひ
- 根性雖愚鈍 好自致学位根性は愚鈍と雖(いへど)も 好めば自(みづか)ら学位に致る
- 一日学一字 三百六十字一日に一字を学べば 三百六十字
- 一字当千金 一点助他生一字千金に当り 一点他生を助く
- 一日師不疎 況数年師乎一日の師をも疎(おろそ)かにせざれば 況(いはん)や数年師をや
- 師者三世契 祖者一世眤師は三世(さんぜ)の契り 祖は一世(いつせ)の眤(むつみ)
- 弟子去七尺 師影不可踏弟子七尺(しちしやく)を去つて 師の影を踏むべからず
いまのことば
一日にたった一字でも、一年つづければ三百六十字。
一字は千金に値し、一点が人生を助ける。
きょうの暮らしでいうと
童子教でいちばん励まされる句です。一日一字。誰にでもできる小ささです。それでも一年で三百六十字——当時の暮らしに必要な読み書きの、かなりの部分になります。
大きな目標より、小さな毎日。継続の力を、これ以上ないほど具体的な数字で見せてくれます。一日一個の英単語なら一年で三百六十五語。一日一問なら三百六十五問。計算は千年前と同じです。
「一日の師をも疎かにせざれ」——一日だけ教わった先生への礼を忘れるな、まして何年もの師には——と、この章は学びと恩をひとつながりのものとして教えます。「弟子七尺を去つて、師の影を踏むべからず」も、ここにあります。
考えてみよう
- 問一「一日ひとつ」なら続けられそうなことを、ひとつ決めるとしたら?
- 問二小さな継続が大きな力になった実例を、身近に知っていますか。
- 問三一日だけお世話になった人の顔を、何人思い出せますか。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——「師の影を踏まず」はこの章が出典です。三尺(約90センチ)下がって、と言われることが多いのですが、童子教では七尺。それだけ師を重んじたということです。