第十一章
童 子 教 ・ 第十一章 麻の中の蓬
よき ともに ずいじゅんすれば あさの なかの よもぎの なおきが ごとし善き友に随順すれば、麻の中の蓬の直きが如し
原文 随順善友者 如麻中蓬直
この章の本文(第59対句〜第63対句)
- 不和者擬冤 成怨敵加害和(くわ)せざる者を冤(なだ)めんと擬(ぎ)すれば 怨敵(おんでき)と成つて害を加ふ
- 順悪人不避 緤犬如廻柱悪人に順(したが)ひて避(はな)れざれば 緤(つな)げる犬の柱を廻(めぐ)るが如し
- 馴善人不離 大船如浮海善人に馴(な)れて離れざれば 大船の海に浮ぶが如し
- 随順善友者 如麻中蓬直善き友に随順すれば 麻の中の蓬(よもぎ)の直(なを)きが如し
- 親近悪友者 如藪中荊曲悪しき友に親近すれば 藪(やぶ)の中の荊曲(けいきよく)の如し
いまのことば
良い友のそばにいれば、曲がりやすい蓬も、まっすぐな麻の中でまっすぐ育つ。
悪い友に近づけば、藪の中のいばらのように曲がっていく。
きょうの暮らしでいうと
蓬(よもぎ)は放っておくと地を這って曲がる草です。ところが、まっすぐ高く伸びる麻の畑の中で育つと、支えられて、まっすぐ伸びる。環境が人を作ることを、これほど美しく言ったたとえはありません。
意志の力でまっすぐ育とうとするより、まっすぐな人たちの中に身を置くほうが早い——がんばる前に、いる場所を選ぶ。友だち選びは、自分の未来の形を選ぶことなのです。
「善人に馴れて離れざれば、大船の海に浮ぶが如し」。良い人のそばにいる安心感を、大きな船にたとえた句も、この章にあります。
考えてみよう
- 問一「この人たちといると、自分が良くなる」と感じる場所はありますか。
- 問二環境のせいにすることと、環境を選ぶこと。どう違うでしょう。
- 問三あなた自身は、誰かにとっての「麻」になれているでしょうか。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——「麻中の蓬」は中国の思想家・荀子の言葉が源流です。荀子は「人は環境で決まる」と考えた人。孟子の「氏より育ち」系の考えとあわせて、環境の力は東洋思想の大テーマでした。2冊目の書籍にも通じる、千年の環境論です。